マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
医療機関・薬局、“政府・国”がデータを悪用するリスクも
マイナ保険証(マイナンバーカード)自体には医療情報や個人情報が記録されていない。したがって、紛失や盗難などが起こっても、パスワードが知られない限り、直ちに第三者から医療情報等を入手されるリスクは低いかもしれない。 しかし、山崎医師は「医療機関や薬局により悪用されるリスクがある」と指摘する。 山崎医師:「マイナ保険証による資格確認の際、毎回、医療情報の提供に同意するか否かの確認が行われる。だが、患者にとっての目的と利益がきちんと説明されていない。 マイナ保険証で得られた情報を医療機関がどう使うかについての議論が、世の中で十分に共有されていないのではないかという不安がある。 患者が同意を与えれば、医療機関が医療情報を自在に閲覧できるようになり、悪意をもてば、医療情報を非常に簡単に悪用できるというリスクもある。 私人である民間の医療機関でさえ可能なので、政府や国がその気になれば、もっと簡単に悪用されてしまうおそれがある。 このあたりの問題をどうするか、ステップを踏んで議論していかなければならない」 佐藤教授は、同様の問題があるのは個人の医療情報に限られないと指摘した。 佐藤教授(国立情報学研究所):「日本の場合、データの利活用の議論は熱心だが、利活用が適正に行われるかについての議論が不十分だ。 海外だとその点について、罰則等も含めて厳しく議論される。利活用とそれに対する規律は、セットで議論されなければならない」
「地方自治」が侵害されている
シンポジウムでは、利便性の問題、セキュリティリスクの問題のほか、法的観点からの問題も指摘された。 地方自治に関する諸問題に詳しい小島延夫弁護士は、国が市区町村と十分に協議しないまま、市区町村の業務である健康保険業務の変更を迫っている点が、地方自治(憲法92条~95条)の侵害にあたると説明した。 小島弁護士:「マイナ保険証には、本人確認できないなどのトラブルの問題、高齢者施設や成年後見人がマイナンバーカードを預かるわけにいかないという問題がある。 また、マイナンバーカードの発行事務自体について自治体に多大な負担が発生しているという問題もある。 これらの問題は自治体の事務に影響を及ぼす。本来、国が市区町村と十分な協議を行うべきだ。それをすることなく一方的に決めてしまうのは、地方自治の侵害だ」