マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
マイナ保険証への一本化の「12月2日」へ向けた「現実的な対応」とは
最後に、現行保険証の廃止とマイナ保険証への一本化が12月2日に迫っていることを受け、今後、現実問題としてどのように対応していくべきかが議論された。 山崎医師は、医療機関の立場から、患者が保険診療を受けるにあたり不利益を被らない方法を模索することを述べた。 山崎医師:「政府は、12月2日以降に現行の健康保険証が使えなくなるかのような、誤解を招くキャンペーンを行っている。 しかし、実際には向こう1年間、現行の健康保険証は使えるし、『資格確認証』の発行を受けられる。そのことをしっかりと伝えていくということが一番重要だと考えている。 また、『すでにマイナ保険証を作ってしまったが心配だ』という人については、10月以降、 マイナ保険証の利用登録が解除できるようになるので、それを周知していく」 世田谷区の保坂区長、飯山市の江沢市長は、地方公共団体の首長の立場として、住民の利益のための具体的な提案を行っていくことの重要性を訴えた。 保坂区長(東京都世田谷区):「私たちが声を上げたことで、変わってきたこともある。 たとえば、高齢者施設でセキュリティの問題からマイナンバーカードを預かることができないという実態に対応するため、写真認証だけで電子的情報と結びつかないマイナンバーカードが発行されることになった。 オペレーションが複雑になるという問題や、実際には資格確認証が発行されるので広がっていないという問題はあるが、いろいろ変わってきている。 総論でダメだというだけでなく、具体論でどうすればいいのかという案を提出できるように、市区町村の議会等で議論することが必要になってきているかもしれない」 江沢市長(長野県飯山市):「賛成か反対かという議論にとどめるのではなく、様々な考え方、状況を提示し合って議論することが大切だ。 私たちの地域でも、少しでも早くそのような機運を高めていけるよう努力したい」 マイナ保険証については、本記事で扱ったプライバシーリスクの問題や法的問題のほか、前編で取り上げた利便性の問題もある。また、本稿で取り上げたのはシンポジウムで指摘された問題の一部にすぎない。 いずれも、マイナ保険証への一本化に対する賛否にかかわりなく、すべての国民の利益にかかわる問題である。さらに、SNS等での意見や感想の応酬とはレベルが異なり、現場で問題に直面している専門家からの指摘である点にも留意する必要があるだろう。 個人の権利義務に重大な影響を与える政策に関して、議論の前提となる知識が十分に共有されているかどうかさえ怪しいこと、指摘された懸念や問題に対する回答や解決の筋道が担当閣僚等から国民に対して示されないことは、それ自体が問題だといわざるを得ない。 その状態が改善されないまま「マイナ保険証への一本化」が12月2日に行われることがどのような意味をもつのか、私たちは改めて考える必要があるだろう。
弁護士JP編集部