マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
現行の健康保険証の「なりすまし受診」の実態は?
現行の健康保険証について、マイナ保険証への一本化を支持する立場から「なりすまし受診」等のリスクが指摘されることがある。 実際にはどうなのか。具体的なデータを参照してみると、2023年5月19日の参議院の地方創生・デジタル特別委員会において、厚生労働省から、市町村国民健康保険の「なりすまし受診」「偽造」等の不正利用の件数が2017年~2022年の5年間で50件、つまり年平均10件だったことが明らかにされている。 参考までに、市町村国民健康保険の被保険者世帯数は、総務省の調査によれば2023年3月31日時点で1636万3372世帯、2413万6152人である。
「医療情報の提供」と「本人の同意」が整合しないリスク
埼玉県保険医協会理事長の山崎利彦医師は、マイナ保険証の効用としてうたわれている「医療DX」のあり方についても疑問を呈する。 DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、ICT(情報通信技術)によって人々の生活があらゆる面でより便利になるように変化させていくことを指す。 「医療DX」に関する厚生労働省の説明によれば、オンライン資格確認システムと連携することによって、全国の医療機関が、本人の同意を条件に、いわゆる『3文書(※1)6情報(※2)』をすべて閲覧可能になる。また、本人もマイナポータル上で確認できるようになる、とされているが…。 ※1「3文書」:診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書 ※2「6情報」:傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報、処方情報 山崎医師:「患者が自分自身の情報を正しく保つ権利、開示される範囲をコントロールする権利についての議論が乏しい。 たとえば、自分自身の医療情報として記載されているものが本当に正しいのかどうか、確認する方法が全く担保されていない。 また、生まれてからその瞬間まで、場合によっては将来の予測までが丸見えになってしまうことが起こり得る。 診療を受けようとしている傷病と無関係な、過去の疾患等の情報まで、見ることができるようになってしまう」