ディズニー、USJが1万円の大台に…“高価格化”が進むテーマパークの「やむを得ない事情」
テーマパークは「行きたい人だけが行けばいい」けど…
「量から質へ」の転換は、テーマパークのみならず、観光業全体、ひいていえば日本全体で起こっている変化なのである。 しかし、「質」を向上させるには、基本的にその施設の利用料を引き上げるしかない。観光立国推進基本計画でいわれていたように、量に頼るのではなく、一人一人の消費額を上げる方向を目指すのならば、当然それぞれの商品やサービスの単価は上がっていく。 また、テーマパークの事例でも明らかなように、「質」の向上は基本的には「チケット料金の値上げ」を意味している。イマーシブ・フォート東京が典型的なように、ゲスト一人あたりにかけるコストをあげていくことが、体験価値の向上につながっていくからだ。 テーマパークだけであればいいかもしれない。「行きたい人だけが行けばいい」といえるからだ。ただ、それが、観光業界全体で起こっているとなると、(卑近な言い方になるが)これからの観光は「金持ち」しかいけない、ということになってしまうのではないか。もちろん、これは誇張した言い方だ。さまざまな工夫で低価格の観光も実現はされていくだろう。 とはいえ、「質から量へ」のシフトは確実に現在起こっていて、「たくさん消費をさせる」方向へ社会全体が進んでいる。 テーマパークからは、日本の観光産業全体で起こる問題も見えてくるのである。 <取材・文/谷頭和希> ―[テーマパークのB面]― 【谷頭和希】 ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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