地方銀行の7割増益、日本銀行のマイナス金利解除で利息収入拡大…TSMC熊本進出で資金需要も好調
九州・山口・沖縄の地方銀行の2024年9月中間連結決算が14日、出そろった。日本銀行が3月にマイナス金利政策を解除したことに伴う市場金利の上昇で、貸出金利息収入が拡大し、最終利益は16グループ・銀行のうち約7割が前年同期を上回り、増益となった。25年3月期の通期業績予想は約6割が増益を見込む。(中西瑛) 【表】九州・山口・沖縄の地銀の2024年9月中間連結決算
九州フィナンシャルグループ(FG)は利ざやの拡大などで本業のもうけを示す業務純益が前年同期比18・4%増の163億円と、2年ぶりの増益だった。最終利益は前年同期に株式の売却益を計上した反動から減益だったが、笠原慶久社長は14日の記者会見で「色々な分野で投資が盛んだ。良い手応えを感じている」と、地域経済の好調ぶりを強調した。
25年3月期の通期業績予想は、最終利益が前期比7・9%増の285億円と、経営統合の特殊要因があった16年3月期を除くと、過去最高を見込む。
ふくおかFGも25年3月期の通期予想について、最終利益を5月時点の685億円から720億円に上方修正した。五島久社長は「収益の柱がしっかりと見えた半年だった。大きな(経済的)ショックがない限り、クリアできる」と自信を見せた。
各行の好業績を支えたのが、貸出金利の上昇や好調な資金需要だ。半導体の受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出したことなどから、工場や物流施設などへの投資も底堅く、資金需要は好調に推移した。貸出金利息収入は全行で前年同期を上回り、伸び率は平均6・9%だった。
一方、各行は貸し出しの原資となる預金を獲得するために預金金利も引き上げており、調達コストも増加している。宮崎太陽銀行などではこうしたコスト増が減益の一因となった。
日銀が7月に追加の利上げを決定したことを受け、各行は今後、更に貸出金利を引き上げる構えだ。ただ、金利の上昇は融資を受ける企業にとっては負担となり、中小企業の経営を圧迫する可能性もある。南日本銀行の田中暁爾頭取は「一人ひとりの顧客に丁寧な説明をして、理解をいただきたい」と語った。