年収430万円「パワーストーン」に助けを求める、43歳男性の「絶望的な生活」…気が付けば400万円の借金に膨れ上がっていた
競争は苦手、友達もできない
康太さんは子供のころから無口で静かな性格、友達も少なく、人と過ごすことも少なかった。でも、スポーツには長けていた。特に、走るのが早く、いつも運動会ではリレー選手だった。 「両親ともに運動音痴。なので突然変異だと言われていましたね。本気で陸上をやればと、両親にも先生にもすすめられました」 だけど、もともとスポーツが好きなわけではない。競争に興味はない。それより、好きな本やマンガを読んだり、テレビを観る時間が至福だった。 文学青年というわけではないが、エジソンなどの偉人伝、夏目漱石や志賀直哉など有名作家の本を読むのも好きだった。そんな康太さんの気持ちを理解したのか、両親はスポーツを強くすすめはしなかった。 「お前が好きな生き方をすればいい、と父も母も言ってくれましたね。それは子供心にたすかりました。たまたま足が速いからと、ケツをたたかれていたら、反発していたと思うんです。だけどそうではなかった。 そもそも友達と話すことにも興味はなく、図書館からまじめな本を借りて読んだり、マンガのコロコロコミックやアニメのガンダムなどが友達だった。 かといって、漫画家になりたいとか、文学青年でもなくて……ほんと、ただ読みたいものを読んで観たいものを観るだけの少年で、それ以上でもそれ以下でもありませんでしたし、まだ子供だったので、それが悪いこととも思っていなかったんです。でも……」 康太さんは中学生のころから、なんとなく虚しい気持ちを抱えるようになった。学校では、休み時間もマンガや本ばかり読んでいるから当然友達もできない。一応、帰宅部のような読書部に入部したが活動はないので友達はできない。気になる女子がいても当然声をかけられない。 サッカーを題材にしたスラムダンクを読むようになり、ああ、自分もやっぱりスポーツをすれば友達ができたのかもと、フワッと頭をよぎったこともあった。 「かといって、自分からなにか行動できるタイプではなかったし、相談する相手もいないので、そのまま中学校の3年間が過ぎました。自分のしたいことってなんなんだろう? わからないまま、勉強はそこそこできたので、スムーズに地元でそこそこの公立高校に入学して、また帰宅部のような暮らしに……親に内緒でちょっとエッチなマンガやビデオを借りたり、好きなブラビアアイドルが掲載されている写真週刊誌を集めたりの日々が始まった。本当は誰かと仲良くなりたい、未来につながるなにかを知りたい。 そんな自分の悩みをかき消すように、グラビアアイドルに夢中になっていきました」 もやもやした悩みが、いつも胸の中に抱え、友情や恋愛に飢えた高校時代を終えた康太さん。 つづく、<大学のサークルがきっかけで「パワーストーン」に取り憑かれた、43歳男性の末路…得体の知れない不安が襲う>では、大学で出会った尊敬できる先輩によってもたらされた災いを明かす。
安藤 房子(作家・恋愛心理研究所所長)