尾上右近と松田元太が〝兄弟〟に 「ライオン・キング:ムファサ」で、夢に見たディズニー作品吹き替えに初挑戦
松田「声を頼りに信頼関係を築いていける」
そんな右近と松田が対面するのは、この取材日が初めて。収録では一度も顔を合わせる機会がなかったのだという。けれども出会ってすぐに打ち解けたようで、お互いを「ゲンゲン」「ケンケン」と呼び合う関係だ。このふたりの並びは、まさに兄弟のようである。 タカ役が松田だと知ったときのことについて右近は、「ムファサとタカって、表裏一体の関係なんですよね。だからムファサを演じる僕としては、誰がタカを演じるのかがとても重要。どんな仕事でもそうですが、とくにこの仕事は相手がいなければ成立しません。どんな方と兄弟を演じられるのか、とても楽しみでした。タカ役がゲンゲンだと聞いたとき、ピッタリだと思いましたね。早く声が聞きたいと思っていました」と語る。 この発言に続くかたちで松田は、「ムファサの存在があって、タカは存在します。それはタカの声を演じる僕も同じ。ケンケンの声を聞いたとき、安心感で満ちあふれましたね。声を頼りに信頼関係を築いていけるはずだと確信しました」と言葉を重ねた。
アメリカ本国のお墨付きを得た尾上右近と松田元太
右近と松田が声優に挑戦するのはこれが初。すでに歌舞伎界とアイドル界で特別な存在になっている二人は、このオーディションにはどのように臨んだのか。 まずは二人とも、とにかく課題の楽曲を聴き込んだらしい。「この情報を口外してはならないので、それが苦労したポイントでもありました。歌舞伎はみんなで作り上げるものですから、習慣的に楽屋でひとりで音楽を聴くことはありません。スマホのスピーカー部分を耳に押し当てて、こっそりと聴いていました(笑い)」と右近。 これには松田も激しく同意し、「オーディションだけでなく収録もそうなのですが、これが初めての声優のお仕事なので、どういうふうに取り組むのが正解なのか分かりませんでした。ドラマや映画の現場でお芝居をするのとは違いましたね。自分の声にも自信がなかったいですし」と続ける。 二人とも、非常にいい声をしている。右近の声は野太く芯があり、まるでライオンのような、王のような貫禄がある。対する松田の声は繊細で、とてもチャーミング。耳にする者に優しく語りかけるような声の持ち主だ。そんな異なる声質の二人の掛け合いは、何気ないやり取りであっても、心地の良いハーモニーを生み出す。 しかし、いい声をしていれば声優が務まるわけではもちろんない。ディズニー作品の場合は、日本のチームだけでなく、本国のチームの審査もあるのだという。本国では知名度ではなくクオリティーを重視するので、実質この二人はアメリカ本国のお墨付きだというわけだ。予告編からだけでもその一端が垣間見えるだろう。