〈トランプを甘い言葉で誘う〉元KGB工作員プーチンの発言を分析して分かること、ロシアの真の狙いとは?
米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受け、ロシアのプーチン大統領は7日夜に開催された国際会議の場で、トランプ氏と「就任前でも会談する」と発言するなど、米国との対話再開に意欲を見せた。「私が大統領に就任すれば24時間で戦争を終結させる」と豪語するトランプ氏は、民主党のハリス氏と比べれば、ロシアに有利な条件を突き付けやすい相手とみなしているのは確実だ。 ロシアは数日で決着をつける算段でウクライナに侵攻して3年近くがたつ。そのようななか、戦場で北朝鮮の援助も受けねばならない状況にあるのが実態で、トランプ氏の登場は、自ら仕掛けた戦争から抜け出す千載一遇のチャンスと映る。 ただ、トランプ氏は2017年の登板時にもロシアの〝期待〟を裏切り、ロシアが重視するシリアに空爆まで行った人物だ。プーチン氏は7日の演説で、トランプ氏を持ち上げつつ、米国内、また欧州や日本とのさらなる断絶を促す主張を展開していた。 早期に戦争が終結するか依然不透明ななか、トランプ氏を甘言で引き寄せ、西側の足並みを崩す戦法に最重点を置く思惑が浮かび上がる。
世界はロシアを〝必要〟としている
「世界はロシアを必要としており、ワシントンとブリュッセルのいかなる首脳らのいかなる決定も、その事実を変えることはできない」 「トランプ氏は第一期の任期中、追い詰められ、新たな一歩を踏み出すことが(ロシアとの協調路線をとるということが)できなかったのかもしれない」 「たとえ就任式の前でも、会って会談する用意がある」 ロシア南部ソチで7日に開催された国際会議で行われた、トランプ氏の再選決定後初めての演説で、プーチン氏はトランプ氏側に繰り返し秋波を送ってみせた。その言葉はトランプ氏の自尊心をくすぐる一方で、現在ある世界の問題の多くは、米政権(バイデン政権)にその原因があると断じ、米国内の分断をさらに広げる狙いが伺えた。
演説の多くの部分で既存の西側の指導者や国々、北大西洋条約機構(NATO)を批判するなど、西側の足並みの乱れを誘う意図も鮮明だった。演説と、その後の質疑応答は約4時間にも及び、自身の〝タフさ〟を強調した格好だが、自国が、隣国ウクライナに全面戦争を仕掛けている事実に関しては、これまで通りの正当化を繰り返した。