巨大IT規制新法案でスマホアプリは本当に安くなる?国際連携が進むテックジャイアント規制
■ クラウド分野の規制は後に続くか? 伊永:競争が生まれるので、アップルやグーグルが手数料を下げるのではないかという期待が持てます。消費者としては、安いところから良いアプリを選んでダウンロード・インストールできる、そういう選択肢を持つことができます。 「課金の部分だけを自由化すればいい」という声もありましたが、韓国が電気通信事業法を改正して課金の自由化を実現しても、決済手数料の大幅な引き下げにはつながりませんでした。こうした経緯も踏まえ「代替アプリがなければ競争は生まれない」という考えに至り、このような新法になりました。 ──グーグルやアップルのような巨大IT企業には、今回の新法の内容以外にも、まだまだ規制が必要な部分があると思いますか? 伊永:EUのデジタル市場法は、スマホOSのエコシステムに関することだけではなく、他にも様々なことを規制の対象にしています。今回の日本の新法では、アップルとグーグルの2社が対象ですが、デジタル市場法では6社が対象になっています(※)。 ※EUのデジタル市場法では、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、バイトダンス(中国)が規制の対象になっている デジタル市場法ではクラウドに関する規制も含まれており、まだ具体的な規制の対象は明らかになっていませんが、アマゾンやマイクロソフトはクラウドの分野で大きなプレーヤーなので、やがて対象となる可能性があります。 チャットGPTを含む生成AIの分野やクラウドゲームなどは、クラウド上で実行されるので、クラウドも極めて重要な競争上のコアコンピタンスになります。 日本でもクラウド分野まで規制の対象にしていくのであれば、今回の新法を大幅に改正するか、あるいは、全く別の新法を作る必要があります。 ただ、EUはデジタル市場法だけではなく、EU一般データ保護規則(GDPR)や、デジタルサービス法(DSA)などの関連法が成立しています。そうした他の法的義務が課せられている前提の上にデジタル市場法があります。 日本には、そうした他法令はありませんので、今回の新法の中で、セキュリティや青少年保護の観点でもキャップをはめる内容を盛り込んでいます。 ──EUのデジタル市場法と今回の日本の新法の違いに、ウェブからのダウンロードを可能にするかどうか、といった議論があります。