「睡眠時無呼吸症候群」の重症度を医師が解説 重症度分類AHIと段階別の治療法とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類(AHI)とは? AHIによって治療法は変わる? 睡眠中にマウスピースを使うって本当?
編集部: 睡眠時無呼吸症候群は重症度によって分けられるのですか? 和合先生: そうですね。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、ご自宅や医療機関にて、確定診断のための精密検査をおこないます。その結果によって、睡眠時無呼吸症候群かどうかだけでなく、睡眠時無呼吸症候群の重症度も判定できます。 編集部: もう少し詳しく教えてください。 和合先生: 睡眠ポリグラフ検査(PSG)によって睡眠の質や呼吸状態の評価をおこない、確定診断をします。この検査で、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を合わせた「無呼吸低呼吸指数(AHI)」がわかります。AHIが5以上、かつ先述した症状を伴う場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。重症度の分け方は、AHIが5~15で軽症、15~30で中等症、30以上で重症となります。 編集部: AHIの数値によって治療法も異なるのですか? 和合先生: はい、異なります。軽症~20未満までの中等症の場合は、禁煙や節酒などの生活習慣改善や、減量による体重の適正化、マウスピースの使用などにより改善する場合があります。 編集部: なぜ、減量が睡眠時無呼吸症候群の改善に役立つのですか? 和合先生: 睡眠時無呼吸症候群の主な原因として、空気の通り道である上気道が狭くなることがあります。首の周りの脂肪が多いと上気道は狭くなりやすいので、肥満と睡眠時無呼吸症候群は深く関係しているのです。肥満が改善されると、睡眠時無呼吸症候群も改善される可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度分類(AHI)が20以上の場合の治療法とは? CPAPって何? 手術は必要?
編集部: では、AHIが20以上の睡眠時無呼吸症候群の場合、どのような治療をするのですか? 和合先生: もちろん、生活習慣の改善などは必要ですが、AHIが20以上の睡眠時無呼吸症候群の場合は日中の眠気症状が強いこともあり、なかなか生活習慣の改善や減量が上手くいかないといったケースが多いのです。その場合、AHIが20以上で保険適用となる、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure) と呼ばれる装置を使った「CPAP療法」が選択されます。 編集部: CPAP療法について教えてください。 和合先生: CPAP療法は、睡眠中に鼻や口にマスクをつけて気道に空気を送り、気道の閉塞を防ぐ治療法です。睡眠時無呼吸症候群の診断基準を満たしている場合は保険が適用され、CPAP装置も医療機関からレンタルすることができます。ちなみに、先ほどの睡眠ポリグラフ検査も、症状がある場合は保険適用内で検査することができます。 編集部: 睡眠時無呼吸症候群で手術が必要になることもありますか? 和合先生: 睡眠時無呼吸症候群の原因として、例えばアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。ほかにも、軟口蓋(のどちんこ)の一部を切除する「口蓋垂軟口蓋咽頭形成術」や、下顎を前に進めて気道を開放しやすくする「下顎手術」などもありますが、今の日本ではあまり一般的ではありません。体への侵襲がある手術ではなく、体に傷がつかないCPAPが第一選択肢となっています。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 和合先生: 高血圧や糖尿病など、国を挙げて予防や早期発見に取り組んでいる疾患の原因の多くは、源流に睡眠障害があると考えられています。睡眠は体を修復する時間で、良質な睡眠をとることが全ての土台となっています。睡眠障害の検査や治療には保険が適用されるので、少しでも心当たりがあれば、お近くのクリニックなど気軽に相談してみましょう。睡眠障害を専門に診ているクリニックであれば、そのまま検査や治療もできるのでスムーズだと思います。