37歳で“3男1女の父親”の織田信成が全日本で「4位」になれたシンプルな理由「前の現役のときから…」
「前の現役のときから、こういう気持ちで練習できていたらよかったな」
織田は全日本へ向けた練習の中で、身体的に「もう限界」だったというが、1度目の現役の時とは違う感覚があったという。 「練習をしている中で苦しい部分もありましたけれど、新しい発見もあって、すごく楽しかったです」 1度目の現役時代は、どうしても成績を残すことを強く意識してしまい、コーチからのアドバイスに対しても受け身なところもあったという織田。 しかし今や3男1女の父となった37歳の織田は、自分がなぜ滑るのか、どんな練習が必要なのか、なんのためにやるのかという気持ちをクリアに持つことができるようになっていた。 「前の現役のときから、こういう気持ちで練習できていたらよかったなと思うくらいです」 そう言って織田は笑った。
「最後って言ってるじゃないですか。ほんとうにもう、体が限界なので」
若いフィギュア選手であれば躊躇する「マツケンサンバ」という曲に4回転ジャンプと円熟の表現力を盛り込み、若い選手たちと互角以上に競った演技が織田の成長を証明している。その演技を目の当たりにした記者からは、「ほんとうに今シーズンで最後なのか」という質問も飛んだ。 「最後って言ってるじゃないですか。ほんとうにもう、体が限界なので。ちょっとゆっくり休みたいな、と」 そう答えながらも、やはり織田自身にも手ごたえがあったことを感じさせる一幕があった。 「ただ、やっぱり今回の全日本のような緊張感を味わうと………」 一瞬、考えるように間を置くと、こう続けた。 「逃げたくなるけど、この場で戦いたいなという気持ちがすごくあって。あと20歳若返ったらいいのにな、とかは思ったりしましたけど、でも、いさぎよく引退ということにしたいと思います」 競技選手としての最後の滑りは、年明けの「国スポ」(旧国体)を考えているという。 “その後”についてももちろん考えている。 「滑るのも大好きなので、アイスショーに呼んでいただける機会があれば、アイスショーも滑りたいです。今、日本の景気的にも大変ですし、なかなかフィギュアスケートを始めるのが大変な状況だと思います。そういう意味でも、スケートを知らない方たちにスケートの楽しさを伝えられるような、そういう活動もできたらと思っています」 織田は今回の試合前、14歳の長男から初めて「試合、頑張ってな」と言われたという。それも現役に復帰し、全日本選手権にたどり着いたからこそ生まれた思い出だ。 「年齢はただの数字で、歳をとったからできないことはないと、やってきてそれを証明することが少しできました」 年齢という壁を乗り越えた織田が次にどんなことをするのか、さらに多くの人が注目することになったはずだ。
松原 孝臣