軽自動車が持つ「日本一人勝ち」潜在能力 クルマ業界2014展望
「世界戦略」へ何が課題か
しかしまだ問題は少なくない。このクラスにおいて、最もポテンシャルが高い日本メーカーはスズキとダイハツだ。残念ながら体力には限りがある。規模からみても、国内販売の柱である軽自動車とワールドミニマムクラスの二正面作戦を戦うのはいかにも辛い。しかし優劣はつけられない。どちらも大事な局面だ。最良の方法は、日本のガラパゴスな軽自動車規格をワールドミニマムクラスに合わせてしまうことだ。それによって資本も人材も重点的に投入でき、生産設備や資材のコストも抑えることができる。国内戦略車と世界戦略車が共通化することでともにポテンシャルアップし、コスト競争力が増すのだ。 カーディーラーも整備拠点もない途上国で、他に先駆けて販売整備店網を築き上げてしまうことは、将来的に見てもメリットが大きい。特に初めて買う自動車、つまりスタートアップ商品の独占に成功すれば、理想的な形で地域と顧客にいち早く根差すことができる。先進国の例を見れば明らかな様に、経済発展した暁には、より大きなクラスに乗り換えが進み、労せずして利益率の高いクルマへシフトして行くことが可能になる。 かつて、米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルは「Japan as Number One」で世界に日本型経営のブームを巻き起こした。軽自動車には、日本に誇りと実りをもたらすNo.1への可能性が詰まっている。そのためには軽自動車枠の戦略的見直しが欠かせない。世界で売るという目的を持つ以上、ガラパゴス規格を捨てて世界のスタンダードを受け入れるべきだろう。具体的には、全幅規制を1.65メートルへ拡大、排気量1リッターへの拡大、衝突安全の強化が望まれる。
カギは軽自動車規格の見直し
軽自動車税が普通自動車に比べて異様に安かった時代の終わりは、裏返せば「優遇」と引き換えに軽自動車が普通自動車を肩を並べないように、ある種罰則的に決められていた軽規格の枠組みを見直すチャンスでもある。TPPの行方はまだわからないが、米国からは軽自動車規格が非関税障壁であるとの指摘は永らく受け続けている。状況、市場、ニーズ、外圧とあらゆる要素が軽自動車の変化を求めているように見える。 「Japan as No.1」に向けて、マーケットも技術もある。あとはその実現に向けて国が具体的な地図をきちんと書いていきさえすればいい。日本の未来を切り拓く軽自動車技術には大きな希望が満ちているはずだ。 (池田直渡/モータージャーナル)