NTTによるラピダス出資の狙い
AI時代に不可欠の新技術「光電融合デバイス」
NTTは言わずと知れた日本最大の通信事業者であるNTTグループの持ち株会社。NTTドコモやNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェア、地域通信事業(NTT東日本、NTT西日本など)、NTTデータグループなどから成り立っている。電話・通信サービス網を日本全国に構築し、日本の電話の歴史を切り開いてきた。 そのNTTがなぜ半導体に?というのが、そもそもの疑問。通信サービスを支えるために半導体は必要ではあるものの、10億円(11月末時点)の出資を行う必要があるだろうか。ラピダス出資には、NTTが目指す未来の技術革新に対する熱い思いが込められている。 IOWN構想と光電融合デバイス NTTが掲げる次世代ネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」という言葉を聞いたことはあるだろうか? IOWN構想は従来の情報通信システムを変革し、ネットワークから端末まで全ての通信を光(フォトニクス)技術を用いて行おうというもの。 現在のデータ伝送においても光ファイバーを用いた光通信は用いられている。送り手の端末から送出される電気信号を変換器で光信号に変え、光ファイバーを通して送出する。光ファイバーを通して送られた光信号は受け手側の変換器で再び電気信号に変えられ、受け手の端末に届く。これらの技術により、長距離での高速通信が可能になった。 しかし、電気信号を光信号に(または光信号を電気信号に)変換することで、発熱や消費電力の増大、通信速度の遅延などさまざまな問題が生じている。これらの課題を解決するため、IOWN構想では端末内部の電気信号処理を光に置き換えていくことを目指している。ネットワークのみならず端末でも光信号処理を行う「オールフォトニクス・ネットワーク」が実現すれば、さまざまなイノベーションが期待される。このオールフォトニクス・ネットワークを実現するカギとなるのが「光電融合デバイス」だ。