「3密」が大賞 2020年流行語大賞表彰式(全文1)人間関係を深く思う1年だった
人々は自分たちなりにエンタメ、ロマンを求めた
姜:私、「か」なもので第1号になるだけです。それで、言うまでもなく今年はコロナに始まり、ほぼコロナに終わるという。ですから3密とか、あるいはアベノマスクとか、言ってみれば政府や、あるいはパブリックな場で使われている言葉が、官庁用語なのかどうかは別にしまして、そういうものが非常にわれわれの周辺に氾濫した時代じゃないかなと思います。 ただ、それにもかかわらずアマビエとか、あるいは『鬼滅の刃』とか、あるいは『愛の不時着』とか、かなりやっぱり皆さんが、ステイホームかどうかは別にして、自分たちなりにエンタメを、あるいはロマンを求めた、そういう成果が今年の10語の中に入っているんじゃないかと思います。いつの時代もわれわれは、やはり日々の暮らしの中でなんらかの安らぎを求めますし、それからこういう時代だからこそロマンみたいなものがものすごく新鮮になってくる。これは逆に言うと政治がロマンとはまったく真逆な、非常に多くの人にとっては何かロマンチックなものとはまったく違う、なかなか政治に対して信頼が置けない、こういう時代の反映なのかもしれません。 来年は何とぞ、やっぱりロマンに満ちた言葉、あるいはこの新語・流行語であれば少し諧謔的な、あるいはひねった言葉、あるいは言葉として非常にほんわかとした、そういう時代であってほしいなということを最後に申し上げて、私の感想に代えさせていただきます。どうもありがとうございます。 外川:姜尚中選考委員のごあいさつでした。続いて杏林大学教授、金田一秀穂選考委員、お願いいたします。
日本語は1つにまとめるのが上手な言葉
金田一:金田一です。今年は本当にこういう、もうちょっと違う言葉を選びたかったよなと思いながら、本当に選考の会でもうんざりしながら探したという感じがするんですね。あまりにも未成熟な言葉というんですかね、外来語もそうでしたし、パンデミックとか、それから日本語でつくっても濃厚接触であるとか、なんともいえず熟さない言葉が多くて、それもうんざりさせられてたんですね。 それで、3密っていうのはその中ではわりとまっとうだよな。日本語はそういう、なんて言うんですかね、複数のものを1つにまとめるというのが上手にできる言葉なんですね。3Kとか、3高とかね。それと同じように3密っていうので、密接だとかなんだとかいうのがとっても分かりやすく伝えられたというところで、日本語の、なんて言うんですかね、得意技を示したな。これがひょっとするとファクターXなのかもしれない。英語なんかでソーシャルディスタンスとかなんだとかっていうふうに言うのよりも、ずっと分かりやすかったという点で、いいかなという気はしたんですが、それにしてもうんざりする印象は否めません。 来年はどういうふうになるのか分かりませんし、というのは去年の今、こんなふうに今年のこの流行語大賞がなるとは誰も思ってなかったわけで、天災でも人災でもない、でも訳の分からない未曽有の事態が発生したわけで、来年はどうなっちゃうんだろうって、そういうことを言うのもばかばかしいような気が今はしています。本当に一寸先は闇だぞって今思っています。今年の感想でした。 外川:杏林大学教授、金田一秀穂選考委員でした。それでは続いて漫画家、コラムニスト、辛酸なめ子選考委員、お願いいたします。