「エルメス」CEOアクセル・デュマが語る、エルメスと日本その持続的で幸福な関係
安藤: 長く愛用されたプロダクトに、職人にしかわからない技術の粋が残っているとは、感動的なお話ですね。ところで、2024年2月には東京の「麻布台ヒルズ」に新しい店舗がオープンしました。どんなコンセプトなのですか? デュマ: 「麻布台ヒルズ」自体が住宅やオフィスだけでなく、敷地内にレストランや美術館、学校、病院、公園があったりと、とてもユニークな場所であることに共感し、居心地のよい2階建ての一軒家のメゾンを建てました。こちらもガラス張りです。「銀座メゾンエルメス」のことを、街を照らすランタンと私たちは呼んでいるのですが、麻布台の店は温かな光を放つ一本のキャンドルと言えるでしょうか。いずれにしても、エルメスには同じ品揃えの店は二つとありませんから、「エルメス麻布台ヒルズ店」も独自のセレクトをご用意します。またゆくゆくは屋上の庭園などでお客さま向けのイベントができたらと考えています。 安藤: 日本にいらっしゃるときは、どんなことが楽しみですか? デュマ: 私は個人的に京都が大好きです。寺院や庭園を訪ね歩き、歴史の重なりと静謐な雰囲気に感動します。子どもたちは田舎が大好きで、温泉には大喜びしています。昨年、家族旅行で日本に来たときには、息子を連れて新宿のゴールデン街に行ったのですが、彼はすごく気に入ったみたいでした。 安藤: また来日された折には、ぜひ自由な時間をたくさんとって楽しんでください。 デュマ: 本当にそうしたいです(笑)。日本に来るたびに、お客さまが変わらずエルメスの熱烈なファンでいつづけてくださっていることに胸が熱くなります。そのことに感謝を申し上げたいです。 アクセル・デュマ(Axel Dumas) エルメス・インターナショナルCEO。エルメスファミリーの6世代目。パリ政治学院を経てハーバード・ビジネススクールを卒業。法学修士号、哲学学士号を取得。パリバ銀行に8年間勤務したのち、2003年エルメスに入社。経理監査役、リテールディレクター、ジュエリー、レザー&馬具部門のマネージング・ディレクターを経て2013年より現職。 安藤優子(あんどう・ゆうこ) ジャーナリスト、キャスター、社会学者。1958年、千葉県生まれ。フジテレビ系「直撃LIVE グッディ!」総合司会ほか、各局で報道キャスターとして活躍。クリントン米元大統領ほか単独インタビュー多数。近著に『自民党の女性認識─「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)。 INTERVIEW BY YUKO ANDO, EDITED BY MARI MATSUBARA HAIR BY HIRO(FOR AXEL DUMAS). STYLED BY MAKI OGURA. HAIR & MAKEUP BY IKUKO TOKUDA(FOR YUKO ANDO)