新札発行の経済効果は1.6兆円程度か:広く流通する最後の紙幣となるか
新札発行まで1か月
20年ぶりとなる新札の発行の時が、一か月後の7月3日に迫ってきた。新札の一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎の肖像が、それぞれデザインされている。 新札を発行する最大の目的は、偽造防止の強化である。一般に、新札発行から時間が経過すると、技術が陳腐化し、偽造のリスクが高まる。そこで今までも、20年に1回程度の頻度で新札が発行されてきた。今回の新札には、肖像が三次元に見えて回転する「ホログラム」など、最先端の技術が利用されている。 加えて、誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の導入も目的の一つだ。指で触って券種を識別できる工夫や、額面の数字を大きくし、券種を識別しやすくする工夫などが施されている。
経済効果は1兆6,300億円程度か
新札が発行されると、自動販売機、ATM、セルフレジなどを保有する業者は、新札に対応するように、新しい機種への入れ替えやシステムの改修を迫られる。これは、当該業界にとっては大きな負担となるが、一方でこれが、新札発行が生み出す経済効果でもある。 財務省が新札発表直後の2019年4月10日に衆議院財務金融委員会で示した日本自動販売システム機械工業会の試算によれば、新紙幣・硬貨を見分けるため、紙幣のデザイン刷新への対応で約7,700億円、500円硬貨の素材・細かな形状変更への対応で約4,900億円、合計で1兆2,600億円のコストがかかる見込みという。 2021年に発行された新500円硬貨については、今回の新札発行のタイミングに合わせて、新機種購入やシステム改修などの対応をすることを決めた業者が少なくない。その結果、新500円硬貨に対応した自動販売機は全体の7割程度にとどまるという。 さらに業界試算によると、ATMの新札対応コストは全体で約3,709億円と推定されている(GiG Works AddValue Inc.による)。以上を合計すると、新札発行への対応コストは約 1兆6,300億円となる。それは、年間の名目GDPを+0.27%程度押し上げる経済効果となる計算だ。