「スマホを持っているだけで受信料徴収」という恐怖 警戒すべきNHK「放送法改正」の真の狙い
ひたすら低姿勢で法改正を実現させた理由
3月末で更新が停止されたのは、独自の情報を配信していた「政治マガジン」や「事件記者取材note」など六つのサイト。新たに番組関連情報として「報道」「教育」「医療・健康」「福祉」の4ジャンルを提供することになるといい、まずは“悲願”への第一歩を踏み出したわけである。 日本大学大学院新聞学研究科非常勤講師で一般社団法人「メディア激動研究所」の水野泰志代表によれば、 「NHKは9月にも具体的な運用方法などを盛り込んだネット事業の概要を公表する予定です。23年10月に発表した24年度から3年間にわたる『中期経営計画』を改定し、ネット事業の収支を見込んだ25年度予算案を作成します。これが来年の通常国会で承認されれば、来年度後半には新たなサービスが開始される見通しです」 とのことで、 「東京五輪を見越して20年4月からNHKプラスの配信を始めるなど、ネット関連事業に取り組み続けてきたNHKにとって、ようやく念願がかなった格好です。新聞協会からの批判をかわし、ひたすら低姿勢で放送法改正を実現させたのは“ネットを始めなければ生き残れない”と痛感しているからに他なりません」
「視聴者のメリットが見当たらない」
まずはウェブ上での“フレーム作り”が再優先だったというのだが、立教大学社会学部の砂川浩慶教授(メディア論)は、 「今回の法改正は、視聴者のメリットになる部分がまったく見当たりません」 そう断じるのだ。というのも、 「NHKの職員はデジタル化した膨大なアーカイブをキーワードで検索でき、出演者やシーンを呼び出せます。例えばこれを公開することで、視聴者は歴史的な資料にアクセスできるようになる。本来、必須業務にするのであれば、このように“公共の利益に資する方法は何か”という点を考えなくてはなりません。ところがそんな議論はなされず、もっぱら新聞協会や民放連などの声に押し負け、“必須化ありき”で走ってしまったのです」 結果として「同時配信」「見逃し配信」にとどまる“骨抜き”状態にされたといい、さらには、 「新たに受信料支払いを義務付けられるのは、テレビはないがパソコンやスマホを持っており新規でNHKプラスに登録する人ですが、あえてそんな行動に出る人が多数いるとは思えません。受信料という公金に近いお金を使って新しい仕組みを作ったところでメリットがないのですから、無駄遣いの感は否めません」