PGM親会社のアコーディア買収は「2025年問題」への切り札!? ゴルフ場の“松・竹・梅”三極化は生き残りにつながるか?
豪華すぎるクラブハウスをなくせば1人2000円の料金も可能!?
米国、英国に次いで世界第3位のゴルフ場数2177(24年9月現在=日本ゴルフ場経営者協会調べ)を誇る日本とあって、PGM、アコーディア以外の1856コースにとっても、2025年問題はそれぞれに悩ましい問題であることも事実です。 日本ゴルフ場経営者協会の手塚寛会長に、今後の課題について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。 「懸念されるのが労働力不足による倒産です。コース管理のスタッフの高齢化が進んでいて、全員が60歳以上のコースもあるほど。若い人が入っても年寄りばかりなので辞めてしまう。コースの自動化は進んでいますが、自動運転などの機械は数千万円かかる」 人手不足と現場の高齢化。やはり2025年に向け、課題は山積していることは事実のようです。そうした中、ゴルフの大衆化への道筋がすでにできているという見方もあるのです。前出の手塚会長は「少数会員のところは会員が10%程度のところも多くて、実際にはセミパブリック化が進んでいるという側面もあるんです」とゴルフ場の実態を明かします。ビジター頼みの経営形態になっていることで、ゴルフ場に行くハードルが下がってきていることは確かなようです。 そんな状況下でのゴルフ場の生き残り策を手塚会長は次のように提言します。 「今後に向けての対策はいくつもあるんですが、一番は大きすぎて豪華すぎるクラブハウスをなくすこと。水道光熱費、固定資産税がかからなくて済みますから。そうすると1億円で(ゴルフ場の経営を)優にやれます。年間5万人の入場者があるとして、1人あたり2000円の入場料でもやれます。それでコース管理もしっかりできます」。 これは前出の三好氏が語っていた、アコーディアが注力する「ムニシパル」タイプのゴルフ場のイメージとも重なる考え方です。12月4日に都内で行われた日本ゴルフジャーナリスト協会主催のパネルディスカッションにパネリストとして登壇したタケ小山氏も同じ意見です。 「アメリカでは23年現在に存在した1万7000コースのうち3000コースが『ムニシパル』です。で、他のメンバーシップやリゾートコース、パブリックコースが軒並み数を減らしているのに、ムニシパルだけがプラス5%と増えている。それだけ需要があるんです。今もゴルフ場が減り続けてソーラーなどに転用されていますが、そうなるくらいだったら自治体がゴルフ場を買い上げてほしい。47都道府県にそれぞれ一つはそうしたムニシパルのコースがあれば、ジュニアの育成の場にもなります」と熱く語っていました。 少子高齢化が進むニッポン。その対策はリタイヤゴルファーをゴルフ場につなぎ止め、若い世代のゴルファーを増やしていくこと。クラブハウスをシニアなどの施設に転用するなどして切り離し、ゴルフ場を「ムニシパル化」していくことが、2025年問題に対する一つの答えといえそうです。 取材・文/小川朗 日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)