<諜報活動をわかっているか?>可決したセキュリティ・クリアランス制度に横たわる数々の盲点
国籍の取り扱い
一番目の項目として「国籍」を調査項目としているが、仮に国籍が中国もしくは中国からの帰化であった場合は、どう判断されるのだろう。中国には、有事の際に世界中の民間の中国人を動員できるとするほか、特許を無承諾で徴用できるとする「中国国家動員法」が2010年から施行されているほか、17年には、「いかなる組織および個人は国の情報活動に協力する義務を有する」とする「中国国家情報法」が施行されている。 この問題に対する懸念は昨年5月29日に開催された「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」の第6回で、有識者から提議されただけで、議論された形跡はない。 主要7カ国(G7)をはじめとする米国や欧州各国がセキュリティ・クリアランス制度を法制化した時点では、国民にスパイ活動を義務付けたような国は存在しなかったために参考にできる海外の条文は見当たらない。新たにセキュリティ・クリアランス制度を法制化しようとするならば、この問題について十二分に議論されて然るべきだっただろう。 高市早苗経済安保担当相は「評価対象者が外国籍である事実は、考慮される要素の一つ。最終的には調査結果の総合評価で判断される」としているが、外国籍の人材が増えつつある中で、異様と思える法律の施行下にある中国人を制御できる方策が求められる。
「性癖」や「渡航歴」に関する調査
「性癖」や「渡航歴」については調査項目から外されているのが気がかりだ。 諜報活動において、ハニートラップは協力者を得るための最も典型的な手口で、頻繁に利用されている。過去には国のトップでさえハニートラップにかかったと噂されている。 異性によるハニートラップはもちろん、同性愛者に耽(ふけ)る姿を写真にとられ、脅迫されて協力者に成り果てた官僚の例もあり、「性癖」は重要な評価項目として盛り込む必要があったのではないだろうか。「性癖」については米国のセキュリティ・クリアランス申請書類(SF86)に該当する項目はないが、調査員からの質問には必ず含まれている。