長官から「生命を大切にしなさい」と声をかけられた「特攻隊員」が素朴に感じた気持ち
何があっても中島飛行長のいる基地には着陸するな
搭乗員の間では、「何があっても中島飛行長のいる基地には着陸するな。降りたら最後、すぐ特攻に出されるぞ」とか、「中島中佐とは目を合わせるな」などとささやきあわれている。中島は、士気を鼓舞するつもりか、特攻出撃の合間を見ては隊員たちに演芸会をやらせた。転入者があると、その部隊ごとに代表を出して自慢の喉を競わせるのだ。見ているぶんには楽しくもあるし、進んで飛び入りする芸達者もいたが、歌の苦手な角田には、ちょっぴりつらいひと時だった。 (参考:フィリピンで編成された特攻隊の呼称は、「第一神風特別攻撃隊」は第一航空艦隊で最初に編成された敷島隊をはじめとする9隊、「第二神風特別攻撃隊」は第二航空艦隊で編成された艦上爆撃機の8隊、「第三神風特別攻撃隊」は、第一航空艦隊の第二陣、「第四神風特別攻撃隊」は第二航空艦隊の艦爆主体の第二陣、「第五神風特別攻撃隊」は、第七六三海軍航空隊の陸上爆撃機銀河を使い、初めて800キロ爆弾を装備した特攻隊……となる)(続く)
神立 尚紀(カメラマン・ノンフィクション作家)