ブレンボとKWで走りを強化! フォード・フォーカス ST エディションへ試乗 ホットハッチの最適解
たくましい中回転域 日常的な乗りやすさも維持
さて、公道へ出てみよう。280psで達成する、0-100km/h加速時間は5.7秒。ゴルフ GTIと同等に鋭いが、シビック・タイプRには敵わない。 最大トルクは42.7kg-mと太く、中回転域では特にたくましい。ただし、5000rpmを過ぎるとパワーの上昇に陰りが出始める。気持ち良く変速できる6速マニュアルで、最適なギアを選びたい。 7速ATも用意され、これはトルクコンバーター式。デュアルクラッチAT級に、迅速な変速はしてくれない。シフトレバーをDにすれば混雑した市街地を安楽に走れるが、ホットハッチとしての魅力を高めるユニットとはいえないだろう。 シフトパドルで、ドライバー自らギアを選ぶことは可能。それでも、一体感が高まるわけではない。低い速度域では、変速でギクシャクする場面もある様子。 フォードは、エディション仕様をサーキット志向に調整したとしているが、公道との相性は高いまま。爽快に郊外の一般道を駆け回れつつ、ファミリーハッチバックとして日常的な乗りやすさも維持されている。 ステアリングホイールは適度に重く、反応はダイレクト。グリップ力やシャシーバランスに優れ、高い速度域での姿勢制御も、同価格帯のどんなモデルにも劣らない。躍動的な操縦性で、本当に運転が楽しいと思える。 手首を柔軟に動かし、タイミング良くペダルを傾けるだけで、直感的にカーブを克服していける。ロータリー交差点ですら面白い。7速ATでも、きついカーブから鋭く立ち上がれるトラクションを得られる。
ホットハッチのスイートスポット
専用チューニングのエディション仕様では、一層高い自信を抱ける。ピレリPゼロ・コルサが粘り強く路面へしがみつき、さらなるコーナリング性能を獲得している。 ただし、高速道路の速度域でも乗り心地は硬め。座り心地の良いシートが、衝撃をなだめてくれるが。ロードノイズも小さくない。 燃費は、カタログ値で12.5km/L。今回の試乗でも、平均でほぼ同値を得られた。積極的に走る時間が長ければ、相応に悪化するけれど。 英国価格は、通常のフォーカス STで3万7705ポンド(約716万円)から。エディションを指定すると、4万2905ポンド(約815万円)へ上昇する。ゴルフ Rと同等の価格帯といえる。 クラストップの動的能力を備え、日常的に高度なエンターテイメント性を享受できるフォーカス ST。落ち着いた姿勢制御も特長で、ベンチマークといえる完成度にあることは変わらない。 より速いモデルや、四輪駆動のモデルはあるが、楽しさに欠ける場合もある。ホットハッチのスイートスポット的な、フォーカス STの強みにブレはなく、エディション仕様はその魅力をさらに強化している。 こんな素晴らしいドライバーズカーの提供時間は、残り少ない。関心を抱き、入手可能な環境にあるなら、早めに行動へ移された方が良さそうだ。 ◯:ドライバーを魅了する動力性能 一体感のある運転体験 △:少し硬めの乗り心地
フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)のスペック
英国価格:4万2905ポンド(約815万円) 全長:4382mm 全幅:1825mm 全高:1471mm 最高速度:249km/h 0-100km/h加速:5.7秒 燃費:12.5km/L CO2排出量:185g/km 車両重量:1508kg パワートレイン:直列4気筒2261cc ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:280ps/5500rpm 最大トルク:42.7kg-m/3000-4000rpm ギアボックス:6速マニュアル(前輪駆動)
ジャック・ウォリック(執筆) 中嶋健治(翻訳)