投手歴2年半でソフトバンク「ドラ1」 神戸広陵の153キロ右腕「村上泰斗」が歩んだシンデレラ・ストーリー 「佐々木朗希」と「山岡泰輔」の“ハイブリッド”で急成長!
12球団すべてのスカウトが注目する選手に
「あいつのためでもあったんです。硬い土にしました」 粘土質の強い、つまりは「プロ仕様」のマウンドだ。知り合いのグラウンドキーパーに整備をお願いして、その“育成環境”も整えた。 「土を入れ替えたから、球場に行ったとき、強烈なんですよ、投球が。ほっともっとフィールド神戸とか、プロの球場だから下(マウンドの土)が固いでしょ。ああ、こいつはこういうタイプなんだな、と思いました。パーンと踏む力が凄いんですよ」 明石トーカロ球場で行われた今夏の兵庫県大会2回戦・飾磨工戦は9回1死までノーヒットの好投を見せての11奪三振。その完投した試合でも、岡本監督がデータを分析してみたところ、最速が149キロだったが「平均が146キロとかなんですよ。145、146というのを試合を通してキープする。大したもんだなと思いました。スイッチが入ったときは、ホントに強烈なんですが、それよりも対公立校とか、言葉は悪いんですが、ちょっと(相手を)ナメた感覚でパチーンと投げたときのホップというんですか、高めの球とか、これはエグい球を放るよな、って思うんですよね」 続く3回戦、ほっともっとフィールド神戸での西宮今津戦はリリーフ待機で、1点ビハインドの8回無死一、二塁からマウンドへ上がると、2イニングで5奪三振。味方の援護を待ったが、チームは敗れ、夢の甲子園にはたどり着けなかった。 それでもプロ12球団、すべてから調査書が届いた。その伸びのあるストレートに、早くから着目していたのがソフトバンクだった。 *** この記事の後編では、村上がソフトバンクのスカウト陣を仰天させた投球やスカウト部長が「村上は山本由伸2世です」と断言していた理由などについて取り上げる。 喜瀬雅則(きせ・まさのり) 1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「稼ぐ! プロ野球」(PHPビジネス新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」、「阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?」、「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」(以上いずれも光文社新書) デイリー新潮編集部
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