投手歴2年半でソフトバンク「ドラ1」 神戸広陵の153キロ右腕「村上泰斗」が歩んだシンデレラ・ストーリー 「佐々木朗希」と「山岡泰輔」の“ハイブリッド”で急成長!
「ロッテ・佐々木」と「オリックス・山岡」のフォームをミックス
6月には、生光学園(徳島)との練習試合で5回11奪三振。相手の生光学園・川勝空人も日本ハムの育成ドラフト1位で指名された右腕で、村上との“競演”に、プロ10球団のスカウトが視察に訪れていた。 投げるたびに進歩の跡を見せつける村上に、学校へ練習視察に訪れたある球団のスカウトは、岡本監督に「コントロールがこのひと冬で格段に良くなった。こんなに急激によくなる選手を自分は見たことない」と絶賛したという。 その“急成長の謎”を、村上は「自分のスタイルが確立されてきた」という。 校内にある寮で暮らす村上は、実に研究熱心で器用だという。暇さえあればスマートフォンでユーチューブの映像を検索し、メジャーリーガーや日本の一線級の投手が見せる投球フォームの映像を徹底的にチェック。投球フォームや変化球の極意を記した書籍なども熱心に読み込み、その特徴や良さを取り入れ、独自のアレンジを加えていくのだ。 投球始動時の左足の振り上げ方は、左ひざから下の部分が一度、三塁方向にポンと伸びる独特の動きを見せるロッテ・佐々木朗希にそっくり。投球始動に伴う体重移動の際に、体が打者方向に突っ込み過ぎないよう、左つま先を立てながら体を打者側へ推進させていくのは、オリックス・山岡泰輔のフォームを研究したものだという。 「自分は投手を始めたときから、キャッチャーのクセ、内野手寄りって言うんですか。上半身主体の投げ方だったので、どうしたらいいのかと考えて、足の使い方、下半身の使い方を参考にさせていただきました。いろんな方のフォームを掛け合わせて、やっと自分の形になってきた、というところですかね。まだ全然完成ではないですけど」 身長1メートル92の佐々木、同1メートル72の山岡。体格も投球スタイルも全く違う、その2タイプの“いいとこ取り”で、身長1メートル80の村上が自分のものにしてしまうという、その適応ぶりには驚かされる。 “佐々木風の左足”には「バランスを崩すなよと、それくらいの細かいことを言い続けるくらいです」と岡本監督は言うが、山岡風の体重移動に至っては「教えてもできることではなくて、こっちも触れません。内旋する力がすごくて、投げるときの爆発力がそこから出ているんだと思います」。その特色を伸ばし、さらに羽ばたかせようと、岡本監督は学校のブルペンの土を入れ替えることを決断したという。