大谷翔平は”三冠王”になれる…?今季高打率の要因、メジャー首位打者との大きな違いとは【コラム】
相手投手はストライクゾーンに投げたら終わり…?
2021年、2024年のコース別打率の変化をみると、ど真ん中、真ん中低めのストライクの打率が1割以上向上しているほか、内角低めは5分以上、外角高めや外角真ん中は5分近く向上している。甘いコースを確実に安打にできるようになったほか、安打にできるコースが全体に広がっている。 以上からは、安打の方向性がセンターから逆方向に広がるとともに、安打にできる投球コースが広くなり、真ん中付近を確実に安打にするようになったことが、大谷選手の打率の向上に直結している可能性が高い。
2年連続首位打者は“さすがの技術”
以降は、アラエス選手の打球に関して、大谷選手と同様に分析していく。 アラエス選手は、現地時間8月4日終了時点で、平均バットスピードがMLB最低の62.9mph(約101.2キロ)でありながら、スクエア・アップ率(バットスピードと球速からの理論上の最大打球速度に近い打球を打てた割合)がMLB最高の43.9%であるという特殊なスイング特性を持つ。スイングの遅さを芯に当てる技術でカバーしているイメージだ。 そのアラエス選手の2023年、2024年の安打の打球方向は以下のようになった。 あらゆる方向に安打を打っていることには変わりないが、2023年に比べ打率を落している2024年は、打球の飛距離が低下して短い距離の安打が目立つ感はある。2時点間の数字を比較すると、割合の増加したライト方向の打球の打率の低下幅が最も大きくなっており、2024年はどの方向も大谷選手の打率より低くなっている。
今季は明暗くっきりと…3年連続首位打者に暗雲…?
コース別の打率をみると、2024年は前年に比べ、ムラがある。真ん中の高低は数字を伸ばしたが、その他のストライクゾーンは軒並み数字が低下した。 ストライクゾーン内に関しては、ど真ん中、外角真ん中、外角高めといった、大谷選手が得意としているコースをむしろ苦手にしているように見える。一方、外角高め、内角低めのボール球で4割を超える打率を残している。 大谷、アラエス両選手の打撃内容を比較すると、打率の数字は似通っていても打撃内容は大きく異なっている。その元をたどれば、アラエス選手のスイングの特殊性に起因するのかもしれない。 一方、今年2024年は、アラエス選手の打撃に首位打者を獲得した前年ほどの安定性はなく、大谷選手の方がむしろ安定しているように見える。 そして、今年のナショナルリーグは全般に打率が低く、8月4日終了時点ではいわゆる3割打者が5人だけだ(※)。この中で、毎年打撃を進化させ、今季は全般に波の少ない打撃を続けている大谷選手にとって、2024年は格好の首位打者獲得のチャンスでもある。 (※:小数点第4位を四捨五入で切り上げた結果ちょうど3割になる1人を含む) 歴代の日本人メジャーリーガーの中で、シーズン終了時に規定打席に達して年間3割を超える打率を残したのは、2023年の大谷選手以外には、イチロー氏、松井秀喜氏だけだ。 まして、両氏が活躍していた時代に比べ、現在は投手のレベルの向上や守備シフトの進化もあって平均打率は低下している。この環境下で高打率を残す点にも大谷選手の価値の高さがあることは忘れてはならない。
ベースボールチャンネル編集部