なぜ阪神は西の完封&佐藤の1号2ランの“連敗ストップあるある“の模範試合でトンネル脱出に成功したのか
一塁ベンチ前でキャッチボールをしていた西は、「4番として一発大事なところで打ってもらって、次の回、僕が失点しないように考えてマウンドに上がりました」という。 だが、その大切な2回に西はピンチを招く。先頭の宮崎にヒットを許し、一死一塁となってから大和にレフトオーバーの二塁打を打たれたのだ。失点を覚悟する場面だったが、一塁走者の関根が、打球判断を誤ってスタートが遅れ、三塁コーチは大きくオーバーランしたところでストップしたのである。 一死二、三塁。阪神は1失点OKの守備隊形を敷いたが、西は外角のボールゾーンに曲げるスライダーで山本を三振に打ち取ると、投手のロメロも凡退させた。横浜DeNAの記録に残らないミスにも助けられ無失点で切り抜けたのである。 阪神は、その裏にも、一死三塁からロメロのワイルドピッチでラッキーな1点を追加したが、序盤の4点のリードが、西にとってプラスに働き、その投球テクニックがさえわたることになる。 西の昨年の防御率は3.76。ゲームは作るが3点は取られるピッチャーである。接戦になると制球ミスも起こりやすくなるが、4点のリードがあれば大胆にストライクゾーンを広げることができる。ツーシームとスライダー、チェンジアップを両角に集める精密なコントロールと抜群のコンビネーションで横浜DeNAを翻弄していく。真ん中のゾーンへの失投はほぼなかった。7回で90球、8回を終えて109球である。 西は完封を意識していた。いやエースと期待されてオリックスからFA移籍してきた男の責任感だった。9連敗中、中継ぎ陣が崩壊。2試合あった勝ちゲームは、新守護神に指名したケラーが崩れ落とした。2軍落ちしたケラーの代役に指名された湯浅は、まだセーブシチュエーションで投げていない。 「途中からリズムもよくなってきて、自分のテンポで投げることができていた。ワンチャン(完封も)いけるかもという気持ちを持ちながら毎イニング上がっていた。中継ぎも苦しい展開でずっといっていてチームの流れを背負っている感じだったので、なんとか長いイニングをと。楽な継投にもっていきたい一心で投げた結果の完封だった」 矢野監督もまた、「代打を出すつもりはなかった。勇輝(西)に任せたい」と、交代を告げる気持ちはなかった。 9回は牧、宮崎、関根を三者凡退。鮮やかな118球の無四球完封劇は、2020年9月17日の巨人戦以来である。