「いい人」でいることは心身にとって有害!? 八方美人が与える影響とその対策
八方美人とトラウマの関係性
マテ医師によると、女性が不健康なまでに自分の性格を責めてしまうのは、主に女性が課せられた「あらゆる衝撃を吸収して自己を抑制する」という社会的役割のせい。でも、女性は巨大な一枚岩みたいに強くない。むしろ、マテ医師が言うように、幼少期の大きなトラウマ(暴力、性的虐待、貧困等)や小さなトラウマ(話を聞いてもらえない/愛されていない/受け入れてもらえないと感じる、一緒にいると安心できて信頼のおける家族がいない等)がある女性は、自己非難の道に進む確率が高くなる。 男性は「か弱い」「女々しい」と思われることを恐れて自分の感情を隠す傾向にあるけれど、女性のように社会から「自分の怒りを抑え込め」と言われているわけではない。マテ医師いわく「本来、感情を見せるのは人間の対処メカニズム」。にもかかわらず感情を押し殺すことが習慣になると、いつもそうせずにはいられなくなることがある。でも「中毒者がドラッグを使った直後に感じる高揚感と同じで、偽りの強さで得た安心感は長続きしません。だから、もっともっと、何度も何度も欲しくなります」 米スタンフォード大学の精神医学・行動科学部臨床助教授ケイティ・フラカランザ博士は、慢性八方美人向けのオンラインコースを提供しており、そのコースの参加者にいくつかの身体的な併存症が見られると言う。 「現代人のほとんどは、極度の疲労がある状態か免疫が抑制された状態で生きています」と語るフラカランザ博士の顧客には女性が圧倒的に多い。トラウマという言葉を多用したいわけじゃないけれど、自分のニーズを犠牲にしてまで人のニーズを優先させる行動が成り立つ過程や、その行動を食い止める方法には興味があるそう。「八方美人は感情を回避するための行動です」とフラカランザ博士。「彼女たちは『いい人でいよう』とか『みんなを幸せにしよう』と思っているのではなく、自分の意見を言うことで人と対峙したときに湧くであろう感情が怖いから人のニーズを優先するのです」 でも、フラカランザ博士によると、この状態から脱したいなら、八方美人を“やさしさ”ではなく“感情を回避するための策”として見るようにすればいい。