ラ・リーガ2部で初の女性主審誕生も…あぶり出されたジェンダー平等の遅れ
文 木村浩嗣 6月24日、「ラ・リーガ2部リーグに初の女性主審誕生」というニュースが、スペインでは歴史的出来事として報じられた。サッカー連盟が今回、昇格を認めたマルタ・ウエルタ・デ・アサは「スペインの女性審判は重要な進歩を遂げている。この成功は女性みんなの成功だ」と喜んだ。副審としては1部に3人、2部に1人の女性がいるが、主審としては彼女がプロリーグ第1号となる。
日本から見たら「遅れている」?
折しも、開催中のUEFA EURO 2024で女性審判が一人もいないことが物議を醸したばかり。2年前のカタールW杯は主審3人、副審3人の女性が参加する史上初めての大会で、大事なグループステージ第3節ドイツvsコスタリカを女性主審(ステファニー・フラパール)が任されたことで話題になっていた。もちろん、W杯にもEUROにも“女性枠”は存在せず、実力のみで選んだ結果、6人やゼロになっただけなのだが……。 ただ、この女性初の主審誕生のニュース、Jリーグのファンが聞けば「スペインはずい分遅れているな」と思ったのではないか。日本では山下良美が2022年9月に初めてJ1の笛を吹いているからだ。 今回ウエルタ・デ・アサが選ばれたのはJ2相当の2部リーグなので、1部リーグの笛を吹くためにはもう一度昇格することが必要。数年かけて実績を積むのが普通なので、彼女がサンティアゴ・ベルナベウやカンプノウで笛を吹くのにはまだまだ時間がかかるだろう。山下はカタールW杯にも参加しているのだが、スペイン人女性のW杯デビューはさらに先になるに違いない。
サッカー界では根強い女性への偏見
世界経済フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数によれば、2024年版の日本の順位は146カ国中118位で、スペインは同10位。サッカーに限っては、この男女平等先進国と後進国の地位が完全に逆転しているのが目を引く。 4大リーグの中でも、スペインは明らかに遅れている。 最も早いドイツでは、ビビアナ・シュタインハウスが2017年にブンデスリーガデビュー済み。フランスでは前述のステファニー・フラパールが2019年にリーグ1デビュー済み。イタリアではマリア・ソーレ・フェリエリ・カプティが2022年にセリエAデビュー済み。最も遅いイングランドでも、レベッカ・ウェルチが昨年プレミアリーグデビュー済みである。 このコーナーでもスペインサッカー連盟の前会長や元女子代表監督による性加害疑惑をお伝えしてきた。今回のこの「歴史的出来事」が明らかにしたのは、皮肉にもスペインサッカー界にはびこる女性への根強い偏見および差別だった。