100種類以上のバターを味比べした二人が語り合う、自分好みのバターの見つけ方と用途別おすすめバター。
自分好みのバターの条件を見極める楽しさ。
長尾 ジャージー牛、発酵、チャーン製法。その3つが、津田さんのバター選びのポイントなんですね。わかります。私は、実は塩分量がわりと気になるんですよね。日本の有塩バターって、だいたい1.0~1.5%前後の塩分量になっていますよね。海外のはもっと強くて、たとえば3~3.5%くらいのが流通しています。でもバターの塩分って、しょっぱいかどうかより、もっと根本的な味の違いを生んでいる気がします。有塩だとバターの味が濃く感じられる。不使用だとクリーミーさが際立つ。私が買うのはほぼ食塩不使用バターです。 津田 バターごはんのときも食塩不使用を使うんですか。 長尾 そうですね。塩味が欲しければ醤油でつけます。私がバターをどんどん使うのはお菓子作りや料理のときなので、食塩不使用のほうが使い勝手がいいんです。生乳のコクが、他の食材と合わせたときにはっきり味わえるから好きですね。よく思うのが、バターってたぶんワインと同じなんですよ。テロワール(土壌)の賜物なんです。ぶどうが育つ土壌がワインの味を変えるように、牛が食べる牧草の成分が生乳の味、ひいてはバターの味や色や風味といった個性を決めていくわけですから。 津田 そうそう、草とか飼育法とかもいろいろ工夫されていますよね。通年、昼夜問わず、山の中で放牧している酪農家さんもいるし。そういう徹底的なグラスフェッドで育てているところもあれば、冬場はどうしても牧草だけでは難しくて、枯れ草などの飼料を混ぜるところもある。それで、季節によってバターの色が白っぽくなったりする変化も面白いです。
好みがわからないうちは、パケ買いもあり。
長尾 どのバターも本来、お母さん牛が子どもを産んで、その子牛が飲むべきミルクを我々人間がもらって、加工させてもらうわけです。バターの美味しさは母牛の愛ですよ。ごめんなさい。大きなことを言ってしまった(笑)。
津田 いえ、そのとおり(笑)。バターって生乳と塩だけで作るシンプルなものなのにどれも美味しい。私はいまほどにはバターに詳しくなかったころ、かわいいパッケージだったらとりあえず買う、とパケ買いしていました。そうして自分好みのものを探す過程も楽しいです。