100種類以上のバターを味比べした二人が語り合う、自分好みのバターの見つけ方と用途別おすすめバター。
長尾 私が「実はこんなにバター好きだったのか」と自覚したのは、仕事を通じてなんですよね。もともと私は大学が畜産関係でした。牧場実習に行って、搾りたての牛乳の美味しさに感動したんです。牛もかわいくて、自分は単なる牛好きだと思っていた(笑)。その後、富澤商店に入社して、売るならもっと知らなきゃとバターの研究をするように。それでテレビの『マツコの知らない世界』に出たり、津田さんにお声がけいただいて『バターの本』で試食しまくったりして、自分のバター観もできてきました。実際、どのバターがおすすめかとか、自分好みのバターをどうやって見つければいいのかとか、聞かれませんか。 津田 聞かれます。実はあの本を作るときに120種類弱を3日間くらいで一気に食べたんです。そうしたら、ちょっとわかってきたんですよ。もちろん誰にでも当てはまるわけではないですよ。私なりに、です。まずは、牛の種類かなと。日本のバターのほとんどがホルスタイン種の生乳から作られています。でもイギリスのジャージー島に由来するジャージー種の生乳で作るメーカーさんもある。私が好きだなと思うバターは、そのジャージー種のものが圧倒的に多いんです。あと、発酵と非発酵だったら、発酵バター派です。 長尾 クリームを攪拌する際に乳酸菌を加えて作るのが発酵バター。フランスのはほとんど発酵タイプですよね。乳酸菌が入っているといっても酸味というよりもすっきりとした味わいが特徴で、独特のコクと旨味がある感じ。逆に、国産のは非発酵バターが主流で、さっぱりしています。 津田 好きなバターの条件でもうひとつ肝心なのは、昔ながらのチャーン製法で作られたものであること、でした。
---バターをもっと知るための重要ワード---
●チャーン製法 クリームを激しく攪拌(チャーニング)するためのハンドルが付いた回転式の製造機を、バターチャーンと呼ぶ。その昔ながらの製法のこと。古くは木製だったが、現在はステンレス製が多い。 ●バターの色 決め手となるのは牛の種類、原材料となる生乳のカロテンの含有量。グラスフェッドという牧草だけを餌にして育てられた牛のミルクは黄みが強い。栄養分に関しては、黄色も白も大差なし。 ●バターの保存 開封すると風味が落ちるため、1週間程度で食べきれる量は冷蔵庫へ。残りは小分けにし、ラップやホイルに包み冷凍庫へ。冷凍庫のにおいが移らないよう、密封袋や容器に入れて保存する。