ヨンフォアオーナーにビッグニュース!! 当時の図面から復刻したCB400フォア用純正マフラーを三恵技研工業が限定販売!!
クロームメッキが輝くことに不満を抱くユーザーは少ないだろうが、開発陣の中からは当時の純正部品はこれほどツルツルでピカピカではなかったという声も上がったそう。ただしサンドブラストやショットピーニングなどの後処理で表面を荒らすのも不自然だろうということで、素材には手を加えずクロームメッキを施している。 テーパー形状のサインサーボディとサイレンサーエンドピースの溶接ビード幅も、1970年代当時の製造部門がこだわったポイントだ。デザイナーの佐藤氏はこの部分の継ぎ目が見えないよう溶接痕を研磨して仕上げるよう指示したものの、素材の肉厚が薄いため研磨時の熱でボディやエンドピースがどうしてもゆがんでしまう。 であるのなら、その代わりに溶接痕を処理せず見せる溶接とし、溶接ビードを限りなく狭くしたいとのデザイン要望に対して、三恵技術陣は日本メーカーだけでなく海外メーカーからも溶接機を取り寄せて狭いビードを追求した。そのこだわりは今回再生産されるマフラーにも受け継がれており、一般的な市販車用マフラーよりはるかに狭い溶接ビードを実現している。 ──サインサーボディとサイレンサーエンドピースの溶接ビード幅も、1970年代当時の仕様を再現している。この頃は、溶接を容易にするため内側にバックアップ用のリングをはめるノウハウがなかったので、今回の再生産品もリングなしで溶接を行っている。溶接部後部の絞り部分との境界となるエッジも初期量産品の雰囲気を再現する重要な部分。1970年代当時も生産台数が増えるにしたがい、成型用の金型が摩耗して曲げ部分のシャープさが失われていったそうだ。
余談だが、この溶接ビード幅はヨンフォアが新車で製造されていた際のマフラーと後年部品として販売されていたマフラーを見分けるポイントのひとつとなる。新車の製造中は三恵の工場にもヨンフォアマフラー用の製造ラインがあり、海外メーカーの溶接機で狭いビード幅の溶接を行っていた。しかし新車の製造が終了して補修部品扱いになると製造ラインがなくなり、量産時とは異なる溶接機が使われるようになるため、ビード幅も新車装着時のマフラーより広くなっているのだそう。 多段膨張型サイレンサー内部の隔壁(セパレーター)を貫通するパイプの太さや長さ、位置に関しても設計図通りに再現し、内部の防錆ペイントも当時と同じものを使用している。1974年当時の新車の排気音をはっきり覚えているライダーは少ないだろうが、そのサウンドは程度の良い当時モノよりも明らかに静かで、メンテナンスの状態が良くない車両では排気音よりもエンジンノイズの方が気になることもあり、これが純正新品マフラーの音なのかと感動を覚えるほどだ。 ──サイレンサー内部の隔壁も当時の設計図どおり。経年劣化した純正マフラーと比較すると明らかに静粛で、その一方でエンジン回転数7000rpmオーバーでは勇ましく吠えるという。純正新品マフラーが入手できる貴重な機会だが「装着して当時の新車の雰囲気を体感して欲しいですね」と関口さん。 ──「ヨンフォアが現役だった頃、自分は小中学生でしたから当時の社内事情をリアルタイムで知っているわけではありませんが、入社当時はこのマフラーの開発に携わった技術者がまだ社内にたくさんいたので、いろいろな話を聞きました」と関口さん。1980年代以降、コンピュータを利用した設計が増えて技術者の手や感性が入る余地が少なくなってきたことも、マフラー再生産の動機になったという。