ヨンフォアオーナーにビッグニュース!! 当時の図面から復刻したCB400フォア用純正マフラーを三恵技研工業が限定販売!!
幸い図面は発見したものの、現代の技術者にとってはコンピュータも3Dも存在しない時代に描かれた二次元の図面をどう読み解くかが課題となる。設計図には各部の寸法は記載されているが、三次元曲面は表現されていないからだ。1970年代当時は、図面を元に製作した木型をデザイナーの元に持参し、デザイナーの感性を加えて検討を重ねて形状を決めていくのが一般的だったのだ。 ここで役に立ったのが、当時の量産装着マフラーを3Dスキャンして製作したCADデータである。二次元の図面とCADデータを比較対照することで図面から立体のイメージを膨らませて、半世紀以上前のデザイナーと技術者の感覚と感性の再現に挑戦した。 それでも試作金型では当時の製品が持つ微妙な形状を完全に再現することができず、金型の修正を幾度か行ったが、SANKEIとHONDAのロゴマークを入れる以上、車体各部に干渉せず装着でき、マフラーとしての機能を満たせばそれで良しというわけにはいかないという責任があった。 当時の純正マフラーの完全復元をテーマに開発を行うにあたり、当時よりも技術や加工が進化したために突き当たる難関もあった。そのひとつがエキゾーストパイプの内部構造である。 クロームメッキ仕上げのエキゾーストパイプは、排気熱で表面処理のメッキがダメージを受けないよう、シリンダーヘッド側から一定の距離を二重構造としている。それ自体は昔も今も変わらないが、複数のパーツを溶接して1本のエキゾーストパイプを製造していた1970年代当時は高温部分には二重パイプを使用して、途中からは異なる金型で曲げた一重のシングルパイプを溶接していたのに対して、現代的な製造方法ではエキゾーストポートから集合部まで二重パイプのまま連続的にNCベンダーで曲げるため、パイプの途中で二重を一重に変更することができない。 二重パイプかシングルパイプかを外から見て判断することはできない上に、エキゾーストパイプ全体が二重パイプになることはメッキの耐久性向上にもつながることから、開発陣の中には全面二重パイプでも良いのではないかという意見もあったものの、製造部門が納得せず製法を工夫してウルトラCクラスの手法で途中までの二重パイプを実現した。 一方、当時とは風合いが異なるという理由から問題となったのがエキゾーストパイプ集合部分。当時も現在も、集合部分は素材板をプレスで成型して溶接したパーツを下地研磨することなくクロームメッキ処理しているのだが、素材自体の品質が向上したことで現代版はメッキ後の光沢が良くなってしまったという。 ──集合部は当時も今も、プレス加工後の研磨は最低限で済ませてクロームメッキ処理を行っているが、昔に比べて素材の品質が良くなった分、より光沢が強めになっている。それ自体は決して悪いことではないが、当時の質感を完全再現するという点では良すぎるのも考え物だったという。