【全長以外は同じ?】 90とはどう違う ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション
最初はリーズナブルだった人気車種
2019年にオーダーがはじまって以来、メーカーの生産台数をグンと底上げするほどの人気が続いているランドローバー・ディフェンダー。 【写真】ランドローバー・ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション試乗の様子をみる (41枚) 普通に考えればファミリーカーやオフローダーとして使われるこのクルマに、ハイパワーエンジンなど必要ないように思える。 だが先代ディフェンダーの場合V8エンジン搭載モデルが珍しくなかったし、モデルライフ末期には黒っぽい仕様が爆発的な人気を誇っていたことは記憶に新しい。 つまり今回試乗した黒っぽいV8搭載モデルは作らずにはいられない1台だったのだろう。 ディフェンダー110 V8カルパチアンエディション。先日はこの2ドア、ショートボディ版である90を試乗しレポートしているが、今回はディフェンダーのスタンダードともいえる110。 ボディの長さ以外は90と同じ仕様だが、何しろ90はコンパクトなボディに525psのV8スーパーチャージドを搭載したマッスルSUVである。そう考えれば110はいくぶん大人っぽい性格に違いない。 ちなみに110 V8カルパチアンエディションの価格は1685万円也。まだコロナ前だった2019年の中頃にデビューしたディフェンダーの最初の価格は90で489万円~で購入を真剣に考えた覚えがあるのだけれど、今では90のスタートプライスも972万円~となっている! 車格2ランク増し(?)くらいの話だが、まあボヤしても仕方がない。スタイリッシュな110 V8で走り出してみよう。
110 V8は優等生。でもこれだったら…
スポーツカーにおけるショートホイールベース(SWB)化は機動性、回頭性の向上を狙った設計手法だが、同時にスタビリティが低下する方向にも作用する。 一方オフローダーにおけるSWB化は本格的なオフロード走行で出会う凸凹や岩にお腹を擦らないために重要なランプブレークオーバーアングルを稼ぐための策としてある。 だがほとんどのオーナーが都市部で一般的なSUVとして走らせるであろう黒っぽいボディがお洒落な90 V8に関して言えば、マッスルなパワートレインとスタビリティ確保が難しいシャシーが結婚していることになる。 90 V8のインプレッションで筆者が、「パロディ臭さすら漂っている」と表現したのはそれが理由だ。もちろん走らせてみて破綻は感じられなかった。だがこれがウェットだったら? タイヤが摩耗していたら? と考えると危うい空気がないわけではなかった。 その点、今回の110 V8は思った通りの優等生だった。スタートダッシュも鋭く、2450kgという車重に由来する重ったるい感じもなかったし、高速走行における直進安定性の高さ、ピッチングの少なさも90とははっきりと異なっている。 90が110に対して性能的に優っているのは取り回しやすさくらいかもしれない、などと思いながらしばらく走ったあとでふと「これならディーゼル直6の110で良くないか?」と思ってしまったのである。