1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度運転しただけでは好きになれない
「CXは、1度運転しただけでは好きになれません。でも2回目には、もう1回運転したいと思うようになります。それ以降は、他のクルマへ戻れなくなります」。誰かから聞いた話しだというが、ピューはこれに同意する。 「驚くほどスムーズ。本当に、魔法の絨毯のような乗り心地で、快適な旅を叶えてくれます。とても長いボディですが、フロントへしっかりリアが追従していきますね。自分は、駐車には慣れました。立体駐車場は選びませんけどね」 そして今回5台目のCXとなるのが、2.5 DTRターボ2 ファミリアール。クロスオーバーやSUVが溢れる2024年でも、しっかり存在感を示すステーションワゴンだ。 CXのワゴンボディは1975年に登場しているが、サルーンの生産終了を迎える1989年末に至るまで、ほぼライバルは存在しなかった。フォードやボルボも、180km/hで走れる7・8シーターの上級ステーションワゴンを設定していなかった。 ルーフラインが延長され、リアシートの後方に2名か3名が座れる3列目シートが据えられている。その後ろには、少しの荷物を詰める荷室も備わる。2列目シートも折りたためば、荷室の奥行きは2.1mに迫る。 「2024年に購入したばかり。6名で700km以上の旅を、既に数回楽しみました。来年のル・マン24時間レースにも、これで向かおうと思っています。キャンプ道具を載せて、快適に移動できると信じています」。オーナーのパトリック・カーニー氏が笑顔で話す。
シトロエンと上手に暮らせるか、そうでないか
これは1989年式だが、その古さを感じさせないという。サルーンと引けを取らない走行マナーには、今でも驚くとか。 メーターパネルには、一般的な円形のメーターが並ぶ。車高調整は、ダッシュボード上のスイッチで行う。初期のCXに備わる特徴のいくつは失われているが、それでも本来の魅力は薄れていない。 このファミリアールの弱点といえるのは、オプションで設定された実務的なディーゼルターボエンジン。カーニーのクルマにも積まれているが、1980年代半ばを過ぎた頃には、古びたユニットという印象を放っていた。 パワーには不足なかったとしても、ノイズは大きめ。耐久性も高いとはいえなかった。シトロエンの専門家によると、シリンダーブロックの素材が多孔質で、不調を招くらしい。喜ばせたのは、シトロエンのサービス部門だけだったようだ。 とはいえCX ファミリアールは、次期モデルのXMにブレークが登場する1991年まで、生産が続いた。本物のシトロエンの、有終の美を飾るように。 CXの末期に、AUTOCARはこうまとめている。「シトロエンと上手に暮らせるか、そうでないか。従来どおり、その中間はありません」 著名な自動車ジャーナリスト、LJK.セトライト氏は、「知性派のためのクルマ。条件に合致する人は多くないでしょう」と記している。CXを溺愛するマニアにとって、これ以上の褒め言葉はないかもしれない。 協力:シェブロニック・センター社、ファームーア貯水池、シトロエンCX UK非公式オーナーズクラブ