倒産数は過去最多なのに…なぜ「訪問介護」基本報酬引き下げ?経営者に聞く現状&今後「介護業界が突入する淘汰の時代」
■早い段階から施設に入居する人たちが増えている
人口密度に対して、サ高住などの施設数が全国トップクラスに多いという松山市。一方、安信では在宅介護の利用者自体が減少傾向です。かつては子どもや孫などで支援していた大家族時代から、共働きが当たり前、孫などは県外へと核家族化が進み、1人にかかる家族の介護負担増から施設に入居している…という背景があります。
■「在宅介護は人手不足」その背景にあるのは
団塊世代が75歳以上となり超高齢化社会を迎える2025年問題。さらに団塊ジュニア世代が高齢者へ突入する2040年問題が迫るなか、ますます深刻化している“人手不足”。 2024年の介護福祉士国家試験の受験者数は74595人で、この10年間で半減しました。介護職を目指す若者自体が減っているなか、安信では、サ高住で働く介護職員は年齢が30~40代に対し、在宅を専門とするのは平均50代~60代です。 島田さん: 「施設に比べて、自宅はどちらかというとアウェーな空間で緊張感は高まり、若い人はあまりやりたがらない。また、これまでは1軒ごとの請負契約であることも多く、収入は不安定で、男性も含めて結婚などを機に転職してしまう人が多かったです」 そこで安信では若手正社員を積極的に雇用し、10年前から賃金改革に努めてきました。しかし「求人希望者は大幅に増えたものの辞めてしまう人もやはり多く、体力も気力もいる、特に弱ってきた方々へ気を送るという心をベースとした仕事」だと強調します。
■再び在宅介護のニーズが高まってくる
赤字がつづき利用者も減ってきている中、経営陣として今後「在宅介護をやめる」という選択肢はあるのでしょうか?島田さんは2040年以降、再び在宅介護のニーズが高まってくると考えています。 「これだけ年金が出ないといわれ、生活がますます苦しくなると施設への入居費用が払えない人が増えてきます。サービス利用料が1割負担だった高齢者の方も今後は原則2割負担に上げる。そうすると、今は早め早めに施設に入るのが、経済的理由からできるだけ自宅で…と今度はどんどん引っ張るようになる時代が来る。今、ヘルパー事業所を畳んでいくと、そういう人たちが介護を受けられなくなってしまう」