食用コオロギ生産・加工のグリラス(徳島市)が自己破産へ SNS炎上の影響大、消費者の抵抗感根強く
食用コオロギの生産・加工を手がけてきた徳島大発ベンチャー・グリラス(徳島市)が事業を停止し、徳島地裁に自己破産を申請したことが20日、分かった。昨年からインターネット上で食用コオロギに対する批判の声が高まり、業績が悪化していた。負債額は約1億5千万円。 昆虫食に苦情、対応苦慮 小松島西高、実習で「給食」 グリラスは2019年に設立。美馬市の廃校を借りるなどしてコオロギを量産した。20年に無印良品でコオロギせんべい、22年に県内のファミリマートでコーンスナックが発売された。ペットフードにも展開し、23年5月期の売上高は3800万円に達した。同年にはNTT東日本と情報通信技術(ICT)を活用した飼育の実証実験も始めた。 しかし23年、コオロギの粉末を使った給食を希望者に提供していた県内の高校での取り組みがインターネット上で流れると、「安全性は大丈夫か」などと苦情が殺到。大手スーパーと進めていた商談がなくなるなど、事業の縮小を余儀なくされた。 畜産・水産向けに飼料として大量生産する新事業を模索したものの、設備の導入に必要な国の補助金が受けられず、事業継続を断念した。 コオロギはタンパク質が豊富で、一般的な家畜に比べて生産効率が優れているほか、飼育過程で排出される温室効果ガスの量が少ない。コオロギの食用は、世界の人口増加に伴う食料危機を解決する手段として期待されていた。
SNS炎上の影響大 昆虫食、消費者の抵抗感根強く
「SNS(会員制交流サイト)での炎上の影響が大きかった」。20日、徳島地裁に自己破産を申請していることが分かった徳島大発ベンチャーのグリラス(徳島市)。栄養が豊富な食用コオロギは食糧危機を解決する手段と期待される一方、昆虫を食べることに対する批判が相次ぐなど消費者の抵抗感は根強かった。 炎上のきっかけは、2022、23年に県内の高校で希望者にコオロギの粉末を使った給食が提供されたこと。そのニュースがインターネットで流れると、昆虫食がもたらすアレルギー反応などを懸念する声が上がり、同社に苦情が相次いだ。販売を全国に拡大する計画だったコンビニとの話は立ち消えになり、大量の在庫を抱えた。売り上げの多くを占めていた食用コオロギの事業を23年秋ごろに縮小した。 これに伴い、50人ほどいた従業員を順次削減。起死回生を図ろうと申請していた国の補助事業が不採択となり、事業からの撤退を決めた。 渡邉崇人社長は「長年のコオロギ研究の成果を社会に還元しようと取り組んだ事業が継続できないのは残念」と話した。 全国でも食用コオロギへの逆風は続いている。敷島製パン(名古屋市)は20年にコオロギの粉末をパンに混ぜた「コオロギカフェ」を発売したものの、23年にSNSで批判が噴出し、騒動になった。帝国データバンクによると、今年1月にはインディテール(札幌市)がグループ会社のコオロギ販売の不振などで破産手続き開始決定を受けた。