「鉄道の日立」、世界で無人自動運転 M&Aで英国発1兆円企業へ
天井まで覆われたホームドア。その向こうに真新しい列車が到着し、扉が開く。乗客を迎え入れると、静かに扉が閉まり、滑らかに速度を上げて走り出した──。 【関連画像】ミラノ地下鉄4号線のサンバビラ駅。天井まで覆ったホームドアで線路への侵入を防ぐ 11月中旬、イタリアのミラノ・リナーテ空港から飛び乗ったミラノ地下鉄4号線。運転士はおらず、運転台すらない。完全無人自動運転の「ドライバーレストレイン」だった。 乗り降りするホームにも駅員の姿はなく、2~3分間隔で次々と列車が到着しては発車していく。リナーテ空港駅からミラノ市中心部のサンバビラ駅までわずか12分。あまりの“近さ”に驚いた。 この4号線は2022年11月にリナーテ空港駅を含む6駅が開業し、23年7月にサンバビラ駅まで延伸。24年10月にサンバビラ駅から西の区間が開通して全線開業した。 ●中東や南米、台湾にも この列車を製造し、ドライバーレス運転を担っているのが、日立製作所の鉄道システム事業を担う日立レールだ。 この路線だけではない。デンマークのコペンハーゲンメトロでは02年から既に20年以上の運行実績があり、ミラノ地下鉄では5号線にも採用された。イタリア国内ではこの他、ブレシア地下鉄やローマ地下鉄C線にも導入済みだ。 サウジアラビアの首都リヤドでは、「世界最大の女子大学」として知られるプリンセス・ヌーラ・ビント・アブドゥッラハマーン女子大学(PNU)の構内を走るメトロを手掛けた。ペルーの首都リマではメトロ2号線を、台湾では台北MRT(捷運)環状線をそれぞれ運用する。 23年6月末には、米ハワイのホノルルに高架鉄道「スカイライン」が開業。24年11月末には、ギリシャ第2の都市テッサロニキで初のメトロが運行を始めた。ここまで挙げたのは、いずれも日立レールが製造した、完全自動運転のドライバーレストレインである。 なぜ、日立レールは世界各地の列車を「無人自動運転化」できるのか。それは車両を製造するだけでなく、最先端の信号システムも組み合わせて納入できるからだ。