フランスで始まったエルメスの香水への愛。
しかしある日、私は偶然見つけてしまったのである。 エルメスの女性があんなに太っ腹に、あふれ出る慈愛のように与えてくれた4mlの試供品が、あるフリマサイトで販売されているのを! 「箱もついてきます」と書かれたそのページを見て私はとてもショックを受け、悲しみを感じ、言葉にならない複雑な怒りを抱いた。 そこでは、あのガラスの容器に入った試供品に、勝手な値段が付けられていた。その販売者は現品の容量から換算して値を付けたのかもしれないが、あれは、プライスレスなのである。 私はきっと、自分が大好きなコレクションが貶められたような気がして、そして、あんなにすてきな接客をしてくれた女性の優しさをも踏みにじられたような気がして、個人的な悲しみを感じたのだろう。その後私は、試供品が多くの人の手によって売られていることを知ってさらにショックを受けた。 でも、ある価値を維持するためには、プロセスをおろそかにしてはならない、と彼らには声を大にして言いたい。さもなくばその価値は指のあいだから零れ落ちていく砂のようにはかなく流れていくものなのだ。
text: Shiro, photography: shutterstock