“光る君へロス”の人も…NHK新大河ドラマ『べらぼう』が『光る君へ』を超えて刺さるワケ 「異色ビジネスドラマ」にハマる人、続出!?
蔦重が普通の庶民であることも含め、現代のビジネスシーンに重ねて見られる物語であり、同時に「エンタメはどうあるべきか」を問いかける作品になるでしょう。また、2025年が放送事業開始から100年の節目であることも、国内メディア産業の礎を築いた蔦重をフィーチャーする必然性と言っていいのかもしれません。 主人公やジャンルの選択だけでなく、江戸時代中期や遊郭・吉原が舞台の作品は大河ドラマ初であるなど、挑戦的な作品である様子がうかがえます。
■人間ドラマ重視の作風は「光る君へ」からの継続 そして忘れていけないのは、脚本家・森下佳子さんの存在。これまで「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「とんび」「天皇の料理番」「義母と娘のブルース」「天国と地獄~サイコな2人~」(すべてTBS系)、「ごちそうさん」「おんな城主 直虎」(NHK総合)などのヒット作を手がけてきた、業界人・視聴者ともにファンの多い脚本家であり、「べらぼう」にとって何よりの“品質保証”と言っていいでしょう。
森下さんが手がける以上、単なるビジネスを舞台にした人物一代記ではなく、見応え十分のヒューマン作になる可能性が高そうです。 蔦重だけでなく、遊郭・吉原で生きる女郎や主人、一筋縄ではいかない出版人、喜多川歌麿(染谷将太)ら才能あふれる若き文化人、成り上がった田沼意次(渡辺謙)、サラブレッドの松平定信(寺田心)、「怪物」と言われた一橋治済(生田斗真)ら幕府関係者、報われぬ天才・平賀源内(安田顕)。 横浜さんが「商いの中で色濃く人間ドラマが描かれている」と語っていたように、これらの人物が織りなす人間ドラマこそが最大の強みと言っていいかもしれません。
戦がない時代だからこそ、フィーチャーされるのは人間の本質的な感情。生きがいと誇り、夢と欲望、地位と金……。これらを満たすためにそれぞれの立場で葛藤・選択していく様子は、やはり「天下泰平」「文化隆盛」ながらどこか閉塞感が漂う現代と通じるところがあり、視聴者を引きつけるでしょう。 その戦よりも人間ドラマ重視の作風は「光る君へ」からの継続であり、そこに史実を絡めていくという構成のバランスも同様。森下さんにとっては大先輩の大石静さんが作った流れを引き継げることがプラスに働きそうです。