新国立劇場オペラ『さまよえるオランダ人』愛犬家にぜひ観てほしいオペラがここに
ワーグナー作品に興味はあるけれど、長くて難しいとお思いのあなたにお勧めしたいオペラが『さまよえるオランダ人』だ。重厚長大の極みにあるワーグナー作品とは一味違う、解りやすいオペラがここにある。 弱冠28歳のワーグナーが、自己の作風を確立し、後の名作群への幕開けとなったこの作品のテーマは、永遠に暗黒の海をさまよう呪われたオランダ人船長を、乙女ゼンダの愛と自己犠牲が救う究極の愛だ。注目したいのは、オーケストラを駆使した嵐のシーン。この背景には、若きワーグナーのとんでもない経験があったのだ。 話はまだ無名時代の若きワーグナーが飼っていた巨大なニューファンドランド犬「ロッパー」にまで遡る。当時ロシア領リガの劇場指揮者を解雇された借金まみれのワーグナーが愛犬を連れてパリへと逃げ出す際に、60kgを超す巨大な犬のせいで馬車の乗車をことごとく拒否されたのだ。 それでも絶対に犬を手放そうとしなかったワーグナー。ようやく犬とともに乗り込んだロンドン行きの貨物船が大嵐に見舞われて危うく遭難しかけたというのだから恐ろしい。しかし転んでもただでは起きないのがワーグナーだ。この地獄のような船旅の経験を生かして書き上げたのが、出世作となったオペラ『さまよえるオランダ人』なのだから何が幸いするかわからない。まさにお犬様様。 その後も常に犬と生活を共にしたワーグナーは、筋金入りの愛犬家と言えそうだ。このあたりの詳細を詳しく知りたい方は、『愛犬たちが見たリヒャルト・ワーグナー』(ケルスティン・デッカー著 小山田豊訳)をぜひお読みいただきたい。ワーグナーのイメージがきっと変わるに違いない。 というわけで、ワーグナーが命がけで体験した船旅がどのようなものだったのかを体験すべく、新国立劇場へGO ! リヒャルト・ワーグナー さまよえるオランダ人 1月19日(日)~2月1日(土) 新国立劇場オペラパレス