“誰よりもタイトル戦を楽しんだ男”佐々木勇気八段、初タイトル戦は2勝4敗で敗退も「やりきった」 ファンは労い「この二人をまた見たい」
将棋の第37期竜王戦七番勝負第6局が12月11・12の両日、鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われ、挑戦者の佐々木勇気八段(30)が藤井聡太竜王(名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)に106手で敗れた。佐々木八段は、自身初のタイトル挑戦を2勝4敗で終了。“誰よりもタイトル戦を楽しんだ男”の姿に、ファンからは「いいシリーズだった」「この二人をまた見たい」と労いの声が多く寄せられた。 【映像】佐々木八段、投了の瞬間の表情 輝く瞳を持つ挑戦者が、約3カ月の“冒険”を終えた。決着局の地は、佐々木八段がシリーズ開幕前に“目的地”と見据えていた指宿。名物の砂むし風呂にも負けぬ熱意で、とっておきの作戦を絶対王者にぶつけた。佐々木八段は、全6局で様々な作戦を準備。入念な準備と研究で、若き絶対王者を翻弄した。 決着局は、挑戦者の佐々木八段の先手で相掛かりの出だしに。両者の研究が噛み合い、相掛かり戦としては異例のハイスピードでの進行となった。本局でも挑戦者が主導権を握ったかと見られていたが、1日目の封じ手直前の折衝で変調。終盤戦では藤井竜王が最短で勝ちに突き進むスリリングな指し回しを見せて圧倒。ふっと表情を緩めた佐々木八段は、静かに投了を告げた。 佐々木八段が悔やんだのは封じ手前。馬の進行が本命視されている中だったが、「上手い攻め筋がわからなかった」。選んだのは端に角を打ち付ける一手で「自角の攻め筋に期待したが、局面が微妙に違い読み違いになってしまった」。佐々木八段は、投了直後に「端角が良くなかったですね」と藤井竜王へ声をかけて自戒していた。 結果を見れば藤井竜王の4勝2敗。それでも、第5局までは先手番が互いに白星を飾る激しいシーソーゲームだった。その中で、佐々木八段は振り飛車を含めて異なる戦型を用意。「6局とも全部違う戦型をぶつけてみたが、私もあまり指さない形をぶつけているので準備面は大変だったがやりがいがあった」。タイトル獲得数を26期に伸ばした藤井竜王としても、大きな脅威となったことは間違いなく、「本局も含め、後手番で苦戦する将棋が多かった。佐々木八段にいろいろ工夫をされて、対応力をもっと磨いていかないといけないと思った」と課題を口にする場面もあった。 魅力あふれる挑戦者の姿は、ファンの心も揺さぶった。初めてのタイトル戦で、飾ることなく見せた緊張、喜び、苦しみ…とくるくる変化する表情。さらには、封じ手の封筒に「佐々木」「勇気」と苗字と名前を分けて記した“新手”に加え、気に入ったおやつの連投、勝負メシのダブル注文など、盤外の“勇気流”のふるまいもたびたび話題となるなど、「タイトル戦を誰よりも楽しんだ男」と言っても過言ではない。 決着後、大盤解説会のファンの前に姿を見せると、「7局目をさせないのは残念だが、やりきった。悔いはない。…(封じ手直前の一手には)悔いはありますが(笑)」と一笑い。「時間配分も含めてこれが実力。研究を外れてからの中終盤力がこれからの課題」と柔らかで晴れやかな表情を見せていた。 ABEMAの視聴者からは、防衛4連覇を飾った藤井竜王への祝福はもちろん、佐々木八段の労いのコメントも殺到。「勇気またタイトル戦来いよー」「いいシリーズだった」「強かったよ勇気」「おふたりともありがとう!」「この二人をまた見たい…」「応援するよ」「もっとファンになった」と多数の声が寄せられていた。 (ABEMA/将棋チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部