開業126年の近江鉄道 “ガチャコン”でいく『貴生川』→『八日市』 途中駅にある案内にも注目!?
“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナが現地取材したのは、近江鉄道本線の『貴生川』~『八日市』です。それでは、出発進行! 【動画】鉄アナが実況レポート! 近江鉄道『貴生川』→『八日市』 ◇「羽川英樹の出発進行!」 明治31年の開業から今年で126年を迎える、滋賀県南東部を走るローカル線、近江鉄道。本線は『米原』~『貴生川』間の47.7キロメートルですが、今回は『貴生川』(甲賀市)から『八日市』(東近江市)までの南半分区間を“乗り鉄”してきました。 南の起点『貴生川』は、草津~柘植を結ぶJR草津線や、第3セクターの信楽高原鉄道とも接続する、甲賀市のターミナル駅。ここから米原行・2両編成のガチャコンに乗って出発進行! 本線は日中上り下りとも1時間に1本の運行です。 線路に覆いかぶさる雑草をかき分け、出発から2.6キロメートル走り、最初の駅は旧水口町の中心駅『水口城南』。駅前広場には水口曳山祭りの曳山の壁画が数多く展示されています。駅近くには甲賀市役所や、「あいこうか市民ホール」があり、北側には水口城址(水口城跡)の姿も。ここは徳川家光が上洛の際の宿として築城されたもので、お濠の美しさには定評があります。 その城址近くにあるのが定食屋の「谷野食堂」。ここのロングセラー「すやき」は70年間地元民に愛され続け、かつてバラエティ番組『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系、現『秘密のケンミンSHOW極』)でも紹介されました。肉なしでモヤシと葱(ネギ)だけというシンプルなやきそばが中華の鉢に入って提供され、味付けは塩・胡椒(コショウ)。あとは自分の好みでソースやしょうゆをかけていただきます。400円という料金も地元の学生たちの財布にやさしいソウルフードです。 そしてニューフェイスは「日野ラーメン」(旧店名:麺処八貝)の「貝出汁そば」(ラーメン)です。あさり・しじみ・はまぐり・かきなどの貝と野菜でとったスープは、あっさりながらコクとうま味が絶品なんです。 東海道50番目の宿場町として発展した旧水口町。明治の開業時からある『水口』の駅舎は、市街地からは少し離れた場所にありますが、長い歴史を伝える木造の駅舎や郷愁をかきたてる待合室は、鉄ちゃんにはたまらないスペースです。 この駅から歩いて20分ほどのところにあるのが、行基が建立した臨済宗の古刹「大池寺(だいちじ)」。本堂には甲賀三大仏のひとつである大きな木彫りの釈迦如来が鎮座しています。また小堀遠州作のさつき庭園は圧巻で、宝船・鶴亀や大海原などを表した庭を住職自らが丁寧に刈り込み参拝客の目を楽しませています。 宗教団体と旧水口町の請願でできた『水口松尾』を過ぎると、全長147メートルの清水山トンネルにさしかかります。これが歴史遺産のレンガポータルのトンネル。ここを制限20(制限速度20km/h)でゆっくり進んでいきます。 『日野』は、近江八幡・五箇荘と並んで、多くの近江商人を生んできた歴史ある街。明治の開業時からある駅舎を、古き良きものを残して7年前にリニューアル。木造のベンチが残るホームや、交流施設を兼ねた待合室も昔の面影をしっかり残しています。また駅に隣接する鉄道資料展示室では、かつて使用された鉄道部品や思い出の写真などが数多く展示されていました。 駅から少し離れた街中に出ると見どころはいっぱい。「日野まちかど感応館」は元薬屋さんの建物で、日野商人の主力商品である万病感応丸をつくっていましたが、いまは町の観光基地になっています。もうひとつ見逃せないのは日野商人として大成功した山中兵右衛門の豪邸である「近江日野商人館」。表は質素に、裏は豪華なしつらえとなっており、当時の近江商人の生活ぶりがよくわかります。 そんな歴史ある街並の一角にあるのが石挽蕎麦処「守貞」。名古屋にある人気店の2号店ですが、店内は土間を生かしたクラシカルで落ち着いた空間。ここで打ちたての二八の細打ちそばを堪能します。また時間に余裕があれば、日野町にある体験型農業公園「滋賀農業公園ブルーメの丘」や植物園「日野ダリヤ園」にもぜひ足を延ばしてみてください。 『京セラ前』は1991年に八日市工場への通勤用に京セラが要望してできた駅。しかし、ここを京セラドーム大阪の嵐のライブ会場だと勘違いして、多くのファンがここまで押し寄せたことがありました。そこで沿線の駅には「このまま乗っても京セラドームにはいけません。とりあえずJR大阪駅を目指してください」の案内がいまも掲示されています。 『大学前』の駅横にはびわこ学院大学のキャンパスが広がります。2009に短大から4年制となり、系列の滋賀学園高校は今年の夏、甲子園でベスト8まで進む健闘を見せました。 『八日市』は近江鉄道本線の中間拠点であり、東近江市のターミナル駅。始発の『貴生川』から約42分で到着し、ここで近江八幡に向かう八日市線とも接続します。駅舎は沿線随一の近代的なつくりで、2階には鉄道ファンにぜひ足を向けてほしい近江鉄道ミュージアム(入館無料)も入っています。また8月23日には、会員制の大型スーパー「コストコ」の滋賀県初となる店舗(東近江倉庫店)が名神八日市インターの近くに開業したため、『八日市』駅前からのバス便が増発されています。 近江鉄道では旧西武車両に懐かしの復刻車両のラッピング電車、そして最新の2020年登場の300形など、いろんな車両に出会うことができます。今年度からは赤字解消のため、運行は近江鉄道、鉄道施設は県と沿線自治体という、上下分離方式で運営され、経営の改善に乗り出しています。 なお、現在、金土日と祝日には900円で近江鉄道全線1日乗り放題の乗車券「1デイスマイルチケット」が発売されています。今回乗車した『貴生川』~『八日市』でも片道800円ですから、これはかなりお得。爽やかな秋が来れば、水口や日野の街散歩やグルメ探訪をしながら、ぜひ数々の鉄道遺産から126年の歴史が体感できる“ガチャコンの旅”を楽しんでみてください。(羽川英樹)
ラジオ関西