ラグビー大学日本一に王手!なぜ早大は天理大の野望を打ち砕くことに成功したのか?
早大が“らしさ”を発揮し6季ぶりの決勝進出を決め、2008年度の第45回大会以来となる16度目の大学日本一へ王手をかけた。 1月2日、東京・秩父宮ラグビー場。澄んだ青空のもとに黄緑の芝と1万8232人のファンで埋まったスタンドが映える。全国大学ラグビー選手権準決勝の第1試合で、関東大学対抗戦A・2位の早大が関西大学Aリーグ王者の天理大に52―14で快勝した。昨季は4強止まりだったとあり、スクラムハーフの齋藤直人は、試合後、こう語った。 「去年、この舞台で敗れて1年間、『まずは去年のチームを超えよう』とやってきました。まだ終わってないですけど、去年のチームを超えられて嬉しく思っています」 ターニングポイントは前半終了間際にあった。 天理大はスタンドオフの松永拓朗とアウトサイドセンターのシオサイア・フィフィタのパス交換などで、中盤から早大陣地ゴール前右まで侵入。自軍スクラムを獲得する。ここまで優勢だった力関係をそのままにじりじりと押す。 それに対して早大の齋藤主将は、天理大側から見て塊の左脇に位置。両軍が組み合う境目でぐっと身構えた。相手スクラムハーフの藤原忍がボールを持って飛び出す瞬間を捕まえ、3年生ナンバーエイトの丸尾崇真とともに羽交い絞めにする。藤原に球出しを許さず、そのままハーフタイムを迎えた。 早大は開始26分で21―0とリードしながら、32分には昨季準優勝の天理大に21―7と迫られていた。ここでの齋藤主将の防御は、天理大が優位に進めていたスクラムから追加点を許さず、早大が傾きかけた流れを取り戻した意味でも試合の流れを左右するビッグプレーとなった。オフサイド、ギリギリのリスクのあるプレー選択だった。 計画的な居残り練習を欠かさぬ努力家の齋藤は、このシーンを誠実に振り返った。 「あの場面、フィフィタ選手が来るとある程度わかっていた(藤原からパスをもらうべく走り込んでいた)。相手の強みを出さないため、ボールを渡さないために自分のできることを最大限やった結果がああいった形になりました。オフサイドの部分は、レフリーの方とコミュニケーションも取れていました」 齋藤は攻めても光った。接点から球を持ち出して防御を引き付けたり、その場で拾い上げた球をすぐにさばいたり。ハイテンポなさばきを基本に据えながら、目の前の防御を見定めて緩急をつける。後半に入れば大外以外のスペースも効果的に突き、一定のルーティーンで蹴るゴールキックは8本中6本を成功させた。