ラグビー大学日本一に王手!なぜ早大は天理大の野望を打ち砕くことに成功したのか?
特筆すべきはチームを引っ張った声だ。 防御ラインの整備を促すべく、「ノミネート!」と何度も大きな声を出した。キックを使い陣地を挽回しにいく直前には、接点に入った選手へ必ず「前を見ろ!」と声をかけ、プレッシャーを受けないような意識づけを怠らなかった。齋藤の声でチームが有機的に動いた。 昨年9月以来の公式戦出場となった中野将伍も存在感を示した。右足の故障から戻った身長186センチ、体重98キロの4年生インサイドセンターは、防御を引き付けてのパスや得意のコンタクト、オフロードパスで天理大を翻弄した さらに齋藤主将と1年時から司令塔団を組むスタンドオフの岸岡智樹は、ハイパントを効果的に使った。天理大のナンバーエイト、ジョネ・ケレビの落球を何度も誘発。前半10、19分のトライを生んだ連続攻撃では、大外のスペースへ冷静で鋭いパスを放った。3年生ウイングの古賀由教、2年生フルバックの河瀬諒介の走力を活かした。 頼もしい同期と大勝負をものにした齋藤は、動き続けること、状況を把握し続けることの重要性も語る。 「天理大さんは本当に勤勉なチーム。特にポイント(接点)の周辺でしっかりとセットして(陣形を作って)アタックをする…と。前を見ながら、(空いた)スペースを攻められました」 殊勲の齋藤主将、中野、岸岡が入学したのは2016年度。当時、監督だった山下大悟氏は、旧知の弁護士を“リクルーター“に招いた。それまで他校に後手を踏んでいた、有望株のスカウト合戦の体勢を見直したのだ。多彩な推薦制度を利して入った、この3選手は、1年時から先発に抜擢され、チームの中核を担うことになる。 だが、その反動もあった。今季は、主力のAチームに長らく主戦クラスだったメンバーが多いこと、控え主体のBチームが与えられた試合で結果を出せなかったことなどが影響し、チームの一体感に欠けたのだ。「交流する部分が少なかったこともあり、ひとつになれていないかもしれない、とは思いました」と宇野明彦主務は明かす。 昨季、監督に就任した相良南海夫氏は、控え選手を含めた全部員の連帯感を深めることに気を配った。12月末のBチームの練習試合に出た宇野主務は、こうも強調する。 「(部員同士の)ミーティングを増やすことで、上のチームがやることを下のチームも共有するようになって。試合に出る、出ないに関わらず、戦う準備をする…と。バラバラで勝てるほど甘いレベルじゃない。全試合、全員がやりきるのが大事です」 時間を重ねるごとにまとまりを育んだ。関東大学ラグビー対抗戦(12月1日・秩父宮ラグビー場)で明大に敗れたチームが6季ぶりの決勝へ進んだ裏には、目に見えぬ連帯の力があったのかもしれない。