「ゴリラの鳴き声」で作られたブログが100万以上読まれたワケ…支離滅裂でも引き込まれる文章の正体
エンタメ系トップブロガー「かんそう」さんが培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」をまとめた著書、『書けないんじゃない、考えてないだけ。』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。 【写真】この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい職業
「バカなのに記憶に残る文章」
私は「文章力」とは「文章について本気出して考えた時間の量」と定義しています。しかし、インターネットで「文章力とは」と検索すると、次のような文章が出てきます。 ---------- 文章力は、適切な言葉やフレーズを選び、自らの意図を他者に正しく伝達する能力を意味します。ひとつの技術を磨くだけでは、文章力は高められません。表現の豊かさや語彙力、論理的に考える力、理解力など、多様なスキルを養う必要があります。 ---------- は? 適切な言葉? フレーズ? 意図? 語彙力? あえて言わせていただきたい。「しゃらくせぇ」と。 それが「良い文章」なのか「悪い文章」なのかは、他人が決めること。どれだけ支離滅裂でも、人の心を打つ文章は存在するのです。 ひとつ例を紹介しましょう。 2009年8月18日放送のTBSラジオ『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』内のリスナーから怖い話を送ってもらうコーナー「納涼 いろんな怖い話」にて、こんなメールが読まれていました。 以下、原文ママ。 その頃、僕は小学3年生だったと思います。 当時、小学生だった僕にはとても苦手なことがありました。 それは登下校です。 朝の登校はまだよいのですが、夜の下校となると、本当に毎日が憂鬱でした。 それの原因は、とあるトンネルにあります。 僕の幼少期に住んでいた街は、戦後から街の形がそのまま残っており、ところどころにノスタルジックな雰囲気が漂っていました。 ところが、ノスタルジックと言えば聞こえは良いのですが、当初としては、どう考えてもホラー映画の撮影に使われそうな環境で遊んでいた僕には、その環境は幽霊という物体を想像せざるを得ず、毎日夕刻以降になると、おばけとの戦いでした。 その代表場所が下校時のトンネルだったのです。 僕の苦手なそれは、上に線路が張ってあり高架下トンネルとして機能していました。 そして、薄暗く、小刻みに振動音のするトンネルの途中には小さなお墓が立っていて、それが僕に見えない想像を働きかけていたのです。 もしかしたらここで、作業中死んだ人がいるのかもしれない。 通行者が刺されて死んだのかもしれない。 そもそも、呪縛霊的ななにかかもしれない。 そんな想像をしていた僕は、その想像に打ち勝つためにそこの場所を通るたびに、ある行動をしていました。 それは空手の型をしながら通ることです。 当時、空手を習っていたいじめられっ子の僕は「幽霊に勝つには暴力しかない」と判断したようで、外から見ると明らかに奇妙な動きとして、そのトンネルを前進していました。 もちろん掛け声を大声で言うと恥ずかしかったので、小声で 「セイッ! セイッ! エイッ! セイッ! どっかいけ! オラッ!」 と、ぶつぶつ唱えていました。 もう察されていると思うのですが、僕はこの姿を友人に見られていました。 その後、僕がトンネルで幽霊に取り憑かれたという噂になり、学校で化け物扱いされたことは言うまでもあります。 必死の抵抗も虚しく、女子からは幽霊菌なるものまで創作され、僕の小学校時代は黒歴史の濃い一幕となりました。 ちなみに、そのときに使った言い訳は、サッカーの練習をしていたんだという言い訳だったと思います。ああ、人間が怖い。 (2009年8月18日放送TBSラジオ『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』「納涼 いろんな怖い話」より)