最低でも20km 木星の衛星「エウロパ」表面の氷の厚さを衝突地形から推定
木星の衛星「エウロパ」の内部には広大な海が広がっていると考えられていますが、表面を分厚い氷が覆っているため、直接の確認はできていません。では、この氷殻の厚さはどのくらいなのでしょうか? 超大型望遠鏡VLTで撮影された木星の衛星「エウロパ」と「ガニメデ」 パデュー大学の脇田茂氏などの研究チームは、天体衝突によって形成されるリング構造が幾重にも重なった盆地地形が氷殻の厚さや硬さに関連しているという前提の下、国立天文台が運用する「計算サーバ」でシミュレーションを行いました。その結果、氷殻の厚さが少なくとも20km無ければエウロパに存在する多重リング盆地を説明できないことが分かりました。この研究結果は、あまりはっきりと分かっていないエウロパの構造に関する基本的な情報を与えているという点で重要です。
■「エウロパ」の氷の厚さはどれくらい?
表面に液体の水が大量に存在する天体は、今のところ地球の1例しか見つかっていません。しかし、表面を氷に覆われた氷天体の地下では、氷が融けて液体の水になっている「内部海」が広がっていると広く信じられています。その規模は、体積にして地球の海の数倍から十数倍にもなると言われています。 内部海が存在すると考えられている天体の候補はいくつもあり、木星の衛星「エウロパ」や土星の衛星「エンケラドゥス」など、ほぼ確実に内部海があると見込まれている天体もあります。しかし、これらの天体は表面が氷によって覆い隠されているため、確定した例は見つかっていません。 この「氷殻の厚さはどのくらいあるのか?」という疑問について、はっきりしたことはあまり分かっていません。これまでに得られた探査機による接近探査時の観測データや、コンピューターモデルを使用したシミュレーションを通じて厚さを推定する試みがいくつもありますが、初期の研究では薄ければ数百m、厚ければ数百kmと極めて幅がありました。 この状況は研究が進むにつれて改善されており、例えばエウロパについては氷殻の厚さによって影響を受けると考えられる小さなクレーターを計算モデルに組み込むことで、厚さが数kmから十数km程度まで絞り込まれています。ただし、これまでのモデルでは「硬くて壊れにくい薄い氷殻」と「脆くて壊れやすい厚い氷殻」を区別することが難しいため、厚さをはっきりさせることも難しいという問題がありました。