最低でも20km 木星の衛星「エウロパ」表面の氷の厚さを衝突地形から推定
■氷の厚さは独自の生命にも影響する
エウロパのように内部海が存在するとみられる天体に関心が集まっているのは、そこに独自の生命体がいるかもしれないと予測されているからです。では、仮に独自の生命体が存在するとして、生命体を形作る様々な元素や分子はどのようなルートで供給されているのでしょうか?彗星のような外からやってくる物質や氷殻の分解物がその供給源である可能性がありますが、その供給量は氷殻の厚さにも依存します。 今回の研究では、エウロパの氷殻の厚さに最低20kmという下限値を定めることはできましたが、上限値は定まっていません。エウロパの氷殻を推定するためのデータは、NASA (アメリカ航空宇宙局) が1989年に打ち上げた木星探査機「ガリレオ」の観測結果が主であり、全体的にデータが不足しているという理由もあります。2024年10月にはNASAが新たな探査機「エウロパ・クリッパー」の打ち上げを予定しているため、さらなる観測データがこの状況を改善してくれるかもしれません。 Source Shigeru Wakita. “Multiring basin formation constrains Europa’s ice shell thickness”. (Science Advaces) Brittany Steff & Brandon Johnson. “Icy impacts: Planetary scientists use physics and images of impact craters to gauge the thickness of ice on Europa”. (Purdur University) “衝突シミュレーションで探る氷衛星エウロパの構造”. (国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト)
彩恵りり