薪火×発酵から生まれる新たな本格和食! 日本料理の新時代を担う若手料理人の世界観に迫る
國居:発酵素材は季節に関係なく使えるんですが、やはり四季を心の中では軸にしています。生産者さんとの繋がりも含めて、この時期だったらこの人の食材を使いたいとかあるので、それをベースにして作っています。料理を考えるときは、例えばサワラを使いたいとなったら、どうやったらおもしろいアプローチができるかを考えます。そこに発酵の要素を引っ張ってきて、組み合わせてみますね。とりあえずやってみることが、多いです。 本田:メニューをクリエイトするのってすごく大変だなと思っていて、引き出しが多くないとできないじゃん。サワラに何を合わせるのかを考えたら、引き出しが少ないと、合わせられるものも少ないし、できるメニューも少ない。後は味の感覚もね。しっかりしないと何を作っていいかわかんなくなって、迷走しちゃう。 國居:発酵なら引き出しをずっと腐らせずに置いておけます。先人たちの知恵は本当にすごいなと思います。生ものだけだと、どうしてもそのときに使えるものも限られてしまうので。
本田:そういえば、ユズと山椒と砂糖をほぼ使わないね。 國居:あと、お酢もです。発酵すると酸は食材から自然と出てくるので。山椒は、和食を食べに行くと多用されているなと感じることが多くて。それが、若干、おもしろくないなと個人的には思っているんです。ユズと山椒どちらもめちゃくちゃ好きなんですよ。だからこそ使わずに日本の四季を表現できたらいいなと思っています。
富士吉田に「ハーブスタンド」という生産者さんがいて、そことのご縁がきっかけで、森でいろんなものを採取して食べたり、味わわせてもらったりしました。そのとき、今まで全くメニューに載っていなかった食材がいろんな香りや味わいを持っていることに気づいて、ユズや山椒を使わなくても日本の四季を意外とおもしろく表現できそうだなって思いました。そこから、自分の料理にあえて縛りをつけたんです。不自由というか、一定の縛りがある方がモノって生まれると思うんです。嫌でもいろいろ考えないといけないですから。逆に自由すぎると、意外と新しいものって生まれないなと。あえて自分で枷を作って、挑戦しています。 本田:その方が料理の幅も広がる。だからこれだけいろんな発酵調味料がたくさんできてくるんだね。 國居:例えば、柚子胡椒の代わりにヒノキの葉で作ったヒノキ胡椒を使っています。ヒノキの葉はすごくきれいな柑橘香があるんですよ。そういうのがおもしろいと思います。森に行けば、その度に何かが見つかります。渋谷の店と家の行き来だけでは出会えないものがあるなあと思っていて。最近は地方のレストランにも行ってみようかなとも思います。 本田:地方でやりたいというのもある? 國居:それは、まだ考えたことはなかったですね。 本田:地方からいろいろアイデアを持ってきて、それを東京で体験してもらう。 國居:いろんな土地に行くと、それぞれ違う魅力がいっぱいあるなと思います。ただ、自分がやる意味を見いだせるほどの土地にはまだ出会えていない。とはいえ、料理もまだ8年ぐらいしかやっていません。3年前と今を比べると、作っている料理は違うなと思うし、3年後、どういう料理を作っているかはわからない。もしかしたら地方でやりたくなる日が来ても不思議じゃないなとは思います。今は自分の好奇心に身を任せて、料理を楽しんでいる感じです。