佐々木朗希が1回4奪三振の珍記録も指の”マメ”が原因で64球緊急降板…大谷翔平も悩まされた”難敵”にどう対処していくのか?
先頭の西川遥輝を159kmと158kmの直球で追い込み、真ん中低目へ落ちる147kmのフォークで3球三振に仕留めた。しかし、手前でバウンドしたボールを松川がキャッチできない。佐々木に暴投がつく振り逃げでいきなり走者を背負った。 しかし、佐々木は動じない。2番の小深田大翔をカウント0-2から145kmのフォークで、3番の浅村栄斗を1-2から145kmのスライダーで空振りさせると、4番の島内宏明には2-2から内角低目へ160kmの直球を一閃。見逃し三振に仕留めた。 プロ野球史上で26人目、延べ27度目となる1イニング4奪三振は、初回に限定すれば史上わずか3人目の快挙だった。いきなり全開になったエンジンを象徴する佐々木の奪三振ショーは、2回二死二、三塁のピンチからさらに加速する。 9番の炭谷銀二朗を瞬く間に0-2と追い込むと、この試合で最速タイとなる162kmの直球で空振り三振に斬ってピンチをしのいだ。続く3回は西川、小深田、浅村の上位打線をわずか10球、それもすべて見逃しで三振に仕留めた。 3回から織り交ぜた120km台のカーブとのスピード差に、楽天打線は金縛りになった。この夜の最大9mの風がバックネットではね返ってくる、独特の風向きが生まれるZOZOマリンの恩恵を受けたフォークがいつも以上に切れ味を増した。 4回も島内、そして前述したように銀次がフォークの前に連続三振。11個のアウトのうち実に10が三振。しかし、好事魔多し。7試合ぶり6度目の2桁奪三振をマークし、どこまで伸ばすのかと期待が膨らんだ矢先に、つけいる隙がないほど圧巻だった佐々木の投球が、銀次のバットに空を切らせた52球目を境に急変してしまった。マー君との投げ合いも予期せぬ形で幕を閉じることになった。 マメに悩まされた豪腕として、真っ先に思い出されるのが大谷だ。 風呂に入るだけで「ふやけてしまう」と自認する大谷の指はマメができやすく、日本ハム時代から何度も登板を飛ばす要因になってきた。2016年夏にはマメを気にするあまりにフォームのバランスを崩し、右ひじにも悪影響が出た結果として、約1ヵ月半にわたって投手としての戦線離脱を余儀なくされている。 エンゼルス移籍後もマメに悩まされた大谷だが、もちろん体質だけが原因ではない。マウンドを踏みつけた反動は下半身から腰、上半身、肩甲骨、ひじ、そして手首を伝わりながら莫大なパワーと化して、ボールとの最後の接点となる指先に集約される。 パワーが皮膚の耐性を上回り続ければ、必然的にボールとの摩擦を繰り返す部分、すなわち人さし指と中指の腹が悲鳴をあげる。大谷がそうだったように、160km台の直球を連発する佐々木の体に搭載されたパワーも常人とはかけ離れたレベルにある。 実際、佐々木は大船渡高時代に選出された高校日本代表でも、大学日本代表との練習試合、そして韓国とのU-18ワールドカップで、右手中指にできた血マメの影響で降板している。開幕から初めてローテーションを担ってきたプロ3年目の今シーズン。大谷に共通する超一流の証でもあるマメが、ついに佐々木の前にも立ちはだかった。 4回を無失点のまま降板した佐々木は、6回には治療を終えてベンチへ戻り、一時は楽天に逆転された試合を戦うチームメイトへ声援を送り続けた。報道によれば、佐々木は球団を通じて試合中に次のようなコメントを発表している。 「マメがつぶれた影響で途中降板し、中継ぎ陣に負担をかけてしまって申し訳ないです」 つぶれた症状が軽ければ針などで患部にたまった水を抜き、ガーゼなどで保護して自然治癒を待つのが一般的な治療法となるが、今後は、なんらかの対策が必要だろう。クセになってしまうのが一番怖い。最悪の場合、フォームのバランスを崩し、さらには肩やひじなど別の箇所の故障にもつながりかねない。 中6日のローテーション入り通りならば、8日のオリックス戦(京セラドーム大阪)が次回登板だが、井口監督は言及を避けた。おそらく登板スケジュールは変更となるだろう。 3連勝で4月16日以来となる勝利5割復帰を果たし、意気上がるロッテだが、リーグ2位タイの6勝をあげ、断トツの124奪三振をマークしている令和の怪物は、気になる不安要素を抱えてしまうことになった。