孝・玉コンビ半世紀”運命”、出発点は「於染久松色読販」…大阪松竹座で19年ぶり仁左衛門と共演
来月3日に始まる大阪松竹座の初芝居に、女形の最高峰で、人間国宝の坂東玉三郎が出演する。前半の「お年玉公演」(8日まで)では、上方ゆかりの地唄舞などを披露。11日からの「初春特別公演」では、「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」「神田祭」で、人間国宝の片岡仁左衛門と共演する。仁左衛門が孝夫を名乗っていた1970年代から続く「孝・玉」の名コンビが、大阪松竹座で共演するのは19年ぶり。玉三郎が「運命」と語るコンビの軌跡をたどる。(編集委員 坂成美保) 【画像】土手のお六(松竹提供)
歌舞伎には立役(たちやく)と女形の名コンビが欠かせない。玉三郎は「つくろうと思ってできるものではない。その時代に偶然に生まれてくるもの」と捉える。
鶴屋南北作「於染久松色読販」は、「孝・玉」の出発点となった作品で、初役で演じたのは1971年。東京・新橋演舞場で始まった「花形歌舞伎」の初回公演だった。
玉三郎演じる悪女「土手のお六」と、仁左衛門(当時・孝夫)の小悪党「鬼門(きもん)の喜兵衛(きへえ)」の夫婦は、フグ毒にあたった男の死体をネタにゆすりを企てる。悪のすごみと滑稽味の両方が魅力になっている役だ。
玉三郎は当時、前進座の五代目河原崎国太郎に教えを請い、国太郎から「女形は亭主役にしっかりついて行くことが大事よ」と指導されたが、「どういう意味?」と理解できなかった。
やがてコンビは「桜姫東文章(あずまぶんしょう)」「盟(かみかけて)三五大切」「絵本合法衢(がっぽうがつじ)」など南北作品で持ち味を発揮する。「東文章」は85年の米国公演でも絶賛され、翌年のパリ公演の「かさね」でも共演した。「海外で互いの芸と向き合い、共通の思い出が足跡になった」と振り返る。
半世紀を経た今、国太郎の言葉が身にしみる。「仁左衛門さんは6歳年上で世代的にもぴったり。長く残ってきたのは運命ですね。縁というのかな」
今年は「源氏物語」で市川染五郎と、「天守物語」では市川団子と共演し、若手を導いた。「元気な若い人たちが日々成長する姿にエネルギーをもらう。彼らが30~40歳代になった時、どんな作品を演じるのか、想像することが活力です」