Awichが語る、ジェイ・Zとの邂逅、コミュニティの底上げと自身の成長、フジロック出演
何度転んでも立ち上がるのがAwich
ーツアー期間中の5月には、88risingが主催するHead In The CloudsのNY公演にも出演していましたよね。まさにライブとライブの合間を縫って渡米するようなスケジュールで。 Awich スケジュール的にはギリギリだったけど、ツアーの仙台公演が終わった瞬間に行きました。(ライブDJの)DJ U-Leeと一緒に飛行機に乗り込んでNYに向かったんですけど、今回の経験で、U-Leeもめっちゃ成長してますね。それも超嬉しい。 ー常に相棒のように隣にいる存在だと思うのですが、どのような場面でその成長ぶりを感じますか? Awich 「大丈夫か?」とか「大丈夫だからな」って言葉をかけてくれたり、私に気を遣ってくれたりするんですよ。今まで、そういうことしなかったのに(笑)! 私のことを気にかけてくれることもめっちゃ嬉しいんですけど、「反省会しよう」と呼びかけてくれて、もっと音楽に真剣に取り組んでいる姿勢を感じますね。ツアーを経て、みんなで一緒に成長できている感じがします。 ーそうなんですね。沖縄のAwichから、日本をレプリゼントするAwich、そしてアジアをレプリゼントするAwichというふうに、立っているステージがどんどん大きくなっていっていると思うのですが、特に「88rising Future」の一員としてのコーチェラへの出演、Head In The Cloudsへの出演などを経て、“アジア人のアーティストとして活動している”という意識は前よりもさらに強くなってきていますか? Awich そうですね。強くなってきました。だけど結局、レプリゼントするためにはアジア人としての自分のルーツがどういうものなのかという自分の中の理解と、それを紹介することが肝になると思っていて。もちろん、みんなが人生の中でどんな体験をしているのかを勉強することにも努めているんですけど、それと並行して、自分自身の苦悩や生まれ育った環境や境遇を話すことも大事だと思っています。それによって、「自分と似ているな」って共感することもあるし、苦悩を通して自分たちをユナイトすることもできる。「アジア人のエクスペリエンスって、こういうものなんだ」と感じることが大事だから、やっぱり自分のルーツがわからないと上辺だけの付き合いになるんですよね。“うわべだけの付き合いやめて”ってモンパチ(MONGOL800/「琉球愛歌」)も言ってたんで。だからやっぱり、一回自分をディグっていかないと、深いところで相手と繋がることができない。自分がこんなに自分のことを知っているということが、相手も自分のことを知ろうとしてくれるインスピレーションに繋がっていくと思うんです。そうやって繋がっていくのが、リアル・リレーションシップなんですよね。 ー海外でライブパフォーマンスをする時に工夫していることはありますか? Awich ありますね。MCを多めにして、ちゃんと自分を紹介しています。私がどういう経験をしてきて、次に歌う曲がどういう歌なのかということも多めに、落ち着いてちゃんと喋っています。 ー海外のステージは、やはり緊張しますか? Awich 緊張します。だって、NYのライブで緊張して「GILA GILA」の歌詞を間違えたんですよ(笑)。 ーあんなに何度もパフォーマンスしてるのに! Awich ね(笑)。だけど、「緊張とかもういいや」って思わないとだし。「私、やっぱり緊張するんだ」って一回受け入れて、「どうなってもいいんだから」って自分に言い聞かせてどんどんモードに入っていくことが大事なんですよね。緊張していても、観客のみんなとコミュニケーションを取りながら、「私はこういう人間だよ」「NYは私の亡くなった旦那の生まれ故郷で、今日は娘もいて、2人でここに帰って来てみんなの前に立てることは、本当に意味があることだよ」ってMCで言ったら「わっ!」って反応がありましたし。それをもって、次の曲の紹介をしていくんです。 NYのライブに関してもっと言うと、最後に「Remember」を歌った時に転んだんですよ。サビの部分でモニターの転がしに引っかかって、すってんころりんって。「転けたー!(I fell)」って言って歌い続けたんですけど、終わった後に「さっきこけたけど、私は何回も人生の中で転けたこともあるし、傷だらけになったこともある。顔を地面にくっつけたままずっと立てなかったこともあるけど、それでも立ち上がった」「The show must go on, You have to keep on singing and you keep pushing yourself. Now you see this is the metaphor of life. This is Awich and see you again.(ショウを止めることはできない。それでも歌ってトライし続けなければいけない。これは人生のメタファー。これがAwich、またね)」みたいな感じで締めたら「うぉーー!」って盛り上がって。その時は「自分を捨てる」って決めているからできるんですけど、もちろん終わった時には「やってしまったー!」って後悔もする。もう、それの繰り返しですね。 ーNYのステージで転んだら、そこで頭が真っ白になって一生悔やんでしまいそう。 Awich でも、「切り替えたことが意味のあることなんだから」って自分に言い聞かせました。とは言っても、「すってんころりんだぜ? あそこだけ(ネットで)切り抜かれたらどうしよう、恥ずかしすぎる」って言葉も、頭の中をぐるぐるぐるぐる(笑)。だけどそれも、次にNYでライブをすることがあったら、その時のことを思い返して「5年前のあのステージで転んだんだぜ?」って言えるのもいいヒストリーになるかなって。 ー昨年、Kアリーナ横浜で行われた単独公演でも、「2024年は海外に向けていく」ということをお話しされていました。実際にインターナショナルな活躍の場も増えてきていると思うのですが、ご自身の実感や手応えみたいなものはどうですか? Awich それこそ「THE UNION」に“憧れのレジェンド達の名前も今では並んでいる電話帳”って歌詞があるんですけど、まじでそうなんですよ。だから、だんだん繋がってきているなという感覚はもちろんあります。その一方で、そうした状況を明確に測る力みたいなものはあんまりなくて。自分の人気とかを評価する力はもっと勉強しないといけないなと思っているんですけど、そういう力はチームのスタッフが長けているのでめっちゃ助かっています。私自身は「めっちゃイケてるやん!」って思う日もあれば、次の日は「全然ダメだ」って思う時もある。人にどう見られているか、どう思われるか、売れるとか人気のこととかを考えると、心がどんどん疲れてくるんですよね。そうしたことを真剣に読み取ろうとすると、私のキャパシティには収まらない分析になってきてしまうんです。だからこそ、私のことを心から考えてくれるチームがいる。周りの反応や反響にばかり気を取られると、実際に自分が何をやりたいかが全く分からなくなっちゃう時があるから、そのバランスは気をつけるようにしています。